二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

救われない報われない

INDEX|4ページ/7ページ|

次のページ前のページ
 



臨也はぶらぶら歩く。赤い満月が見下す、汚れきった裏路地を何の目的もなく、ただ歩く。手に持っていたナイフを壁に当てながら、カチンカチンと刃がこすれる音を響かせて。
裏路地を歩いて暫くすると、若者特有の甲高い声が聞こえてきた。臨也は一度止まるとその声の方を向いて足音を忍ばせながら歩く。

(どうしてだろうね。どうして帝人君がいなくなったのに世界は動いているの?どうしてあいつらはあんなに笑っているの?)

帝人が臨也の前からいなくなってどれくらいが経つのか、もはや臨也には分からなくなっていた。
臨也は人間が好きだった。愛していた。そんな人間達が、臨也がもっとも慈しみ、大切に思っていた帝人を殺した。
帝人を奪った人間が憎い。帝人を失って何も思わない人間が憎い。帝人がここにいたことを知らない人間が憎い。
憎い憎い憎い、臨也の心の中はその言葉でいっぱいだった。ドス黒く濁った考えを腹にため込みながら、臨也は笑っていた若者達の前に現れる。
訝しむ表情を向けてくる若者に対し、臨也は歪な笑みを浮かべた。冷徹な瞳を宿して、口元だけを持ち上げる酷薄な笑みを。

「ねぇ、死んでよ」

それからのことは良く覚えていない。気が付いたら真っ赤な返り血が衣服にこびり付いていた。
近くの壁の塀に寄りかかると、そのままずるずるとしゃがみ込む。こみ上げてくる吐き気に抵抗せず、そのまま嘔吐をした。
ひとしきり吐き終わると、空に輝く月を見上げる。月はあの時と何ら変わらない姿を晒していて、言いようもない熱情がこみ上げてくる。

(そう・・・帝人君がいなくなったって・・・世界は回り続ける。変わることのない日常を描いて続けて、そして忘れられるんだ)

帝人の声を、笑顔を、忘れていく自分のように。臨也は奥歯を噛み締めると、拳を造りそのまま背中の塀に叩きつけた。
鈍い音がしたかと思うと、パラパラとコンクリートの壁にヒビが入る。
叩きつけた拳からは血が流れていたがそんなことなど気にもとめず、臨也はだらりと腕を降ろした。

「帝人君・・・みかどくん・・・」

心の中で思い出せば思い出すほど、自分の中に今まであった帝人の記憶を使い切ってしまうかもしれなくて。
記憶がドンドンすり切れていってしまっているようで。また知らずのうちに涙を零していた。

「っ・・・うぅ・・・」

抑えきれない衝動に身を預け、臨也は慟哭する。