こらぼでほすと 一撃3
でも申し訳ないとは思う。テロリストで、贖罪を求められるべき自分が、感謝されるのが
、悪い気はするのだ。
「ぬぁわーに言うかなあ、ママは。こういうのは、必要なの。僕ら、いつもお礼なんて言
わないんだから、こういう時にお礼言わないといけないんだよ。ね? ごくー。」
「そうだよ。俺なんか、ママが具合悪い時でも、弁当してくれたりするじゃん? ああい
うの、すっげぇー嬉しいけど悪いとは思うんだ。だから、こういう日にお礼言いたい。」
「ということなんで、このイベントは許してください、ニール。俺からもお願いします。
俺も、あなたと、カリダさんのふたり母親がいるという認識なんです。」
三人三様に言われると、ニールも頷くしかない。そうしていたら、シンが、デリバリー
到着、という叫びと共に駆け込んでくる。
「やべぇー机出さなきゃっっ。アスラン、手伝え。」
それに伴って、悟空が本堂の裏の物置に走る。そこには、法事の時に使う机が収納され
ている。
続いて、レイがデリバリーの人間と共に荷物を運んできた。あらあら、と、マリューと
アイシャが立ち上がって、邪魔な亭主たちを蹴散らかして、卓袱台の上を片付ける。
「ニール。」
フェルトが離れないので、ニールは動けなくて困った。さて、どうやって離そうか、と
、思っていたら下からフェルトが見上げている。
「ん? 落ち着いたか? 」
「・・・うん・・・あのね、いっこ、言い忘れた。黄色はカガリで、濃いピンクはラクス
からだから。」
「カガリ? あいつのおかんなんてやってネェーよ。」
「カガリは、そのつもりなんだって。キラのママなら、私のママでもあるって言ってた。
」
双子なんだから、平等に扱え、というカガリの発言が聞こえてきそうだ。双子である自
分も弟と、そう両親に主張した記憶がある。小さい頃は、ライルのほうが甘えッ子で、ニ
ールは、どうしても、「お兄ちゃんだから。」 と、後に回されていたからだ。カガリも
、キラばかり構わないで、私の相手もしろ、と、言いたいらしい。
「まあ、いいよ。もう、今更、ひとりふたり増えても、俺は驚かないさ。・・・・フェル
ト、ありがとな。俺もフェルトが大好きだよ? 」
チュッと親愛の印のキスを、桃色子猫の頬にしてやったら、キラが、「僕にも。」 と
、騒いで、結局、全員にやる羽目に陥った。
「なぜ、あの台詞で、いかがわしくないんだろうな? 羨ましい。」
「それは、鷹さんの台詞に、不純なものが入ってるからだろ? 」
「ああいう心温まるシーンは、いいわねぇー。来てよかったわ。」
「ナゴムわ。フェルトカワイイ。」
大人組は、その一部始終を鑑賞して、それを楽しんでいた。なかなか、こういうピュア
にシーンは、鑑賞できないので、大喜びだった。
ようやく、ゴールデンウィークが終わり、お休みムードから、通常モードへ移行する。
フェルトは、そのまま寺へ滞在の予定だ。今週の末に、組織に戻ることになっている。
「もうちょっといなよ? フェルト。僕のはぴばぱーりぃーやるから。」
日曜を跨げば、キラの誕生日だ。そこまで居て、騒いでから帰れば? と、誘ったのだ
が、すでに、次の人の休暇の予定があるので、延長は無理だと断られた。
「でも、夏に降りてくるから、カガリにボディボードを教えてもらうんだ。」
「そうなの? じゃあ、僕とシュノーケリングを、またしようね? 今度は、もっとサン
ゴ礁になってるとこまで行こう。」
「うん、ありがと、キラ。」
キラにしても、フェルトは可愛い妹分だから、何かと構いたいらしい。無口な桃色子猫
だが、随分と馴れて喋る言葉が増えている。
「ほら、くっちゃべってないで、口を動かせ、キラ。時間がなくなるぞ? 」
お茶を運んできたニールが、おやつを放置して話しているキラに注意する。キラたちの
出勤時間は一番遅いが、そろそろ、そのタイムリミットだ。今日のおやつは、三色そぼろ
のおにぎりと、冷やしキツネうどんだ。そろそろ暑くなってきたから、涼しいものになっ
てくる。
「おにぎりは持っていく。アスラン、包んで。」
キラは、ずるずるとうどんをすする。冷やした出汁と味付けキツネの甘い味が合わさっ
て、とってもおいしい。
「アスラン、ついでに、シンたちにも、これ、渡してくれるか? 夜食にしろって。」
六個の三色おにぎりが、すでに、ラップされているのを、ニールがアスランに手渡す。
いいですよ、と、キラの分をラップしつつ、アスランも頷く。
「キラのはぴばの時は、ヘルプをお願いできますか? 」
「ああ、お安いご用だ。」
『吉祥富貴』のナンバーワンホストのキラの誕生日は、店で大々的に行われる。その年
、その年で趣向を凝らすし、お客様も、ほぼ全員が顔を出すので、スタッフ総出で対応し
なければ追いつかない。
「今年の企画は? 」
「まだ細かいことは決まってないんですが、まあ、今日辺り確定すると思います。キラと
悟空の頭から、何が出て来るやら。」
月曜日は、大抵、お客様が少ない。だから、今日は、企画会議だろう、と、アスランも
考えている。そろそろ決めないと、いろんな発注もあるからだ。
「去年は、俺、不参加だったけど、どんなだったんだ? 」
「割りと、オーソドックスでしたが、スタッフ全員が、花をどこかに飾って花の精という
ことで、お客様とダンスしました。ちょうど、ニコルが来てくれたので、生演奏でしたん
で、よかったですよ。」
キラとラクスは、大輪の牡丹を頭に飾り、ふわふわとしたチャイナ服もどきを着た。も
ちろん、服の刺繍も牡丹だ。他は、スーツの胸元や髪飾りに花をあしらっていたが、なか
なか好評を博した。
「それ、俺もやられるとこだったのか? 」
「ええ、もちろん。ママのは、カラーを予定してたはずです。」
行けなくてよかったかも・・・・・と、ニールは頬を引き攣らせた。ちなみに、俺は、
ガーベラで、悟空はひまわりでした、と、アスランは思い出して笑っている。
やはり、店は開店休業状態で、のんびりとホールで全員が企画会議だ。まずは、と、キ
ラと悟空が、八戒に、カトレアと胡蝶蘭の鉢を手渡して、母の日イベントは、きっちりや
った。
「やっぱりやるんですね? キラくん。」
やれやれ、と、鉢をふたつ渡された八戒は苦笑する。ふたりとシンとレイ、アスランが
、八戒にぺこりと頭を下げて、「いつもありがとう、これからもよろしくお願いします、
おかあさん。」 と、挨拶すると、周囲からは拍手だ。
「当たり前だろ? 昨日は、八戒に感謝する日だったんだからさ。」
「悟空、あなた、ニールって新しいお母さんができたでしょ? 古いお母さんは、お役御
免だと思いますよ? 」
「んなことないな。どっちも、俺にはおかんだ。」
悟空が真面目に、そう言うので、しょうがないな、と、八戒も、ありがとう、と、返し
た。どうあっても、おかん業務からは離れられないらしい。そのセレモニーが終わると、
作品名:こらぼでほすと 一撃3 作家名:篠義