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ぐらにる 流れ4

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も、レポートは書き終えた。やれやれと、枚数を確認して、データチップに保存する。
「ニールは、どういう予定なんだ? 」
「あんたほど忙しないことはない。ここの解約手続きとか、エアーチケットの手配とか、

そういう雑用があるから、二、三日は、ここにいる。」
「なら、ドライブしないか? 」
「え? けど、グラハム、あんた、明日の便だったろ? 」
「ああ、だから、私とユニオンまで、飛行機でドライブというのは? 往復しても、三日

とかかるわけじゃない。」
「まだ言うか。それはできないって、何度言わせたらいいんだよ。・・・施設の前で別れ

たら、すっきりするだろ? 」
 ぐたぐだと文句を吐いてばかりなので、わかりやすく施設の前で別れようと提案はして

いた。グラハムには、それほど時間があるわけではないのだし、エアポートまで見送るの

も、なんだかバカバカしいからだ。
「私の姫はつれない。もう少し情緒というものがあればいいのに。」
「泣いて、『行かないで』って、縋りつけっていうのか? それこそナンセンスだ。」
 最初から一ヶ月しか共通した時間はないことが前提だった。それに、本来は敵同士であ

るはずの二人なのだから、それ以上に繋がっていたら、互いの立場がまずいことにもなる

。このマンスリーマンションについて、自分で手続きすることはない。携帯端末ぐらいし

か私物もない。後は、全部ゴミ箱行きだ。
「そこまでは言わないが・・・・私は寂しいんだ。きみと過ごした二週間が、至高の時間

だった。それが、一瞬で無くなることが悲しい。そうは思わないか? ニール。」
「寂しいとは思うかな。」
 その感情も明日までのことだ。明日で、この男は消えてなくなる。毎日のように安眠を

確保してくれたから、それが消滅するとなると、その部分では寂しいというのは本音だ。
「だから、ニール。」
「なら、最後はロマンチックに頼むぜ、グラハム。俺が、あんたのお姫様だっていうなら

、そういうのもいいだろ? 」
「抱っこしてベッドまで運ぼうか? 姫。」
「三歩ぐらいしかないけどな。」
 しんみりとした終わり方をしたくなくて、誘った。明日の朝は、ちゃんとハチミツのか

かったフレンチトーストを用意するつもりをしていた。



 朝食を一緒に摂って、施設へ出かけた。データチップは片手に納まるものだから、俺は

手ぶらだ。グラハムのほうも、荷物は先に送ってしまったから、手ぶらだ。大して時間の

かかるものではないので、カリキュラムの受付をしている事務室で、データチップと修了

書を交換したら終わりだ。
 施設の出口を出るまで、無言だった。そこから、道は分かれる。そこで、ようやく、彼

は立ち止まった。
「ニール、どうしても今の仕事はやめられないか? 」
「やめられない。・・・恒久的平和なんてものが訪れるとは思っちゃいないけどな。でき

ることがあるならやるだけだ。」
「そうか、再会の約束は私もできない。だが、メールぐらいは送れる。それで少しでもき

みと触れ合いたいと願うのは不遜だろうか? 」
「俺は教えられないけど、それでもいいか? たぶん、返信するアドレスは、その度に違

うものになると思う。それでもいいか? 」
「ああ、構わない。では、私のメールアドレスだけ。」
 先に用意していたのだろう。小さな紙切れを差し出した。それを手にして微笑んで、「

さようなら。」 と、告げた。



 タクシーに乗り込んだグラハムを見送ってから、借りている隠れ家へ帰った。まだ食材

はあるから、残りで刹那への作り置きを用意しておこうと思っていた。こちらに来ること

は、あまりない。だいたいは、自分の故郷で休暇は過ごす。まだ時間はあるから、ここを

出たら、その足で故郷へ出向こうと思っている。
 マンションの鍵は開いていた。鍵をかけ忘れたか、と入ったら、ソファに刹那が座って

いた。
「戻っていたのか? 」
「ああ。」
 あまりにも、いいタイミングだ。もしや、と、刹那の顔をじっと見つめたら、刹那は、

携帯端末の着信を確認しているようで、こちらの顔を見ない。先にやるべきことがあるか

ら台所へと向った。そこで、先ほどの彼のアドレスが書かれた紙切れを取り出して燃やし

た。

・・・あんたと連絡なんか取れるわけがないだろう・・・・

 自分の居場所がわかるようなことはしない。それに、相手は敵だ。だから、思い出なん

てものは、後生大事に記憶の中でのみ存在すればいいのだ。一緒に学んだテキストも、着

替えがなくなったと、勝手に着られていた俺の服も、全部、ここで捨てていく。
「ロックオン。」
 綺麗に灰になるまで燃やした紙切れを見ていたら、背後から声がした。
「なんだ? 」
「あの男が、特区を離れた。」
「・・そうか・・・おまえ、監視してたんだな? 」
「ああ、ティエリアからの要請でな。俺はやらなくていいと反対したが、あいつが折れな

かった。」
 そういうことか、と、刹那がタイミング良く現れた理由を理解した。どこからか、自分

が同居していることがわかったから、ティエリアは相手を調べたに違いない。それが、ユ

ニオンの軍人であれば、監視することも妥当なことだ。
「別に裏切った覚えはない。たまたま、ひっかけた相手が、ユニオンの軍人だったってー

のが、正直なところだ。」
「それだけか? 」
「ん? 」
「あれは、カスタムフラッグの搭乗者で、ユニオンでも、俺たちを専属で追いかけていた

やつだ。・・・殺したつもりだったが生きていた。」
「え? 」
「だが、あんたが知らないんだろうとも、俺は思っていた。今度からは、相手を選んでく

れ。それから、今からアレルヤとティエリアが来る。」
 そうでなければ、あんたが一緒に住むなんてしないだろう、と、刹那は苦笑した。カス

タムフラッグといえば、あの半端じゃないしつこさを誇った厄介な敵だ。
・・・やれやれ、俺は一番会わないほうがいいやつに、ナンパされたのか・・・・
 それは、ティエリアも慌てただろう。確かに、同居する相手は選ぶべきだったな、と、

自分も苦笑した。変人だからフラッグファイターでも厄介者かなんかだろうと思っていた

。それが、優秀な相手だと気付かなかったのは失態だ。
「ティエリアは、俺を独房へでも押し込むつもりかな? 」
「それはない。俺が説明しておいた。・・・これから、あんたのことだから、故郷へ戻る

だろう? それに俺たちも同行して、案内してもらうことになった。」
「あーえーっと、単独行動の許可をくれるなら構わない。」
「もちろん、終始、行動を共にするつもりじゃない。」
 どうやって、あの煩いティエリアを黙らせたのだろう、と、不思議に思った。それを視

線で伝えたら、刹那は、珍しく笑った。
「息抜きをしたかったんだろ? ロックオン。」
「ああ、そういうとこだな。」
「あんたのことだから、素性や背後なんて考えないでいるんだろうと思った。それに、あ

んた、楽しそうだった。」
 刹那が監視している限り、ロックオンの笑顔は本物だった。たまたま息抜きの相手が、
作品名:ぐらにる 流れ4 作家名:篠義