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【かいねこ】桜の季節に共に笑おう

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きっかけが何だったのか、俺は知らない。
前のマスターに車で連れていかれ、見知らぬ町に置き去りにされた。
どうしたらいいのか、何処に行けばいいのか、途方に暮れていた俺に声を掛けてくれたのが、今のマスター。

膨大な書類と煩雑な手続きに、どれほどの意味があるのだろうか。

俺に分かるのは、この人が飽きたら、また同じように捨てられるということだけ。



「はい、カイトさんどうぞ!」

ガラスの器を差し出され、手にしようか迷う。

「・・・・・・いろはさん食べれば?」
「あたしの分は、ちゃんとありますから!大丈夫です!」

更に顔の近くに器を突きつけられ、それでも躊躇っていると、

「食べさせて欲しーんじゃねーの?」

氷をかじりながら、マスターがリビングに戻ってきた。

「え?いや」
「ええ!?そうなんですか!?やだ、そんな、カイトさんって、意外と大胆ですねっ」
「くねくねすんな」

きゃーきゃーと身を捩るいろはさんに、マスターがあきれたように言う。

「さ、カイトさん、食べさせてあげます!口開けてください!」
「いや、自分で食べるから」

いろはさんの手から、器とスプーンを取りあげた。

「あー、いろは、振られたなー」
「マスター、氷持ってきましょうか?」
「いらねえよ!!」

仲のいいやり取りを繰り返す二人から目を逸らし、自分のアイスを口に運ぶ。