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【かいねこ】桜の季節に共に笑おう

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「捨てられたって、え?マスターに?」
「はい。マスターに、あ、前のマスターですけど。一緒に出掛けた帰りに、事故に遭いまして。車にひかれて、動けなくなって、そのまま」
「そのまま・・・・・・放置された?」

俺の言葉に、いろはさんはこくりと頷く。

「意識はあったんですけど、体が動かなくて。声も出せないし、痛いし、雨は降ってるしで、本当にどうなるかと思ったんですけど、マスターがーー今のマスターですねーー通りかかってくれたんです。あたしを拾って、修理に出してくれて。色々あって、引き取ってくれたんです」
「それは、どのくらい前のこと?」
「んー、三年くらい前ですね。三年経つけど、今でも、雨は嫌なんです。あの時のこと、思い出すから。なんて、しつこいですかねー」

そう言って、いろはさんは、あははと笑った。


三年。
俺は、三年後に、こんな風に笑えるだろうか。


「いろはさんは、強いね」
「そんなことないですよー。あたしは、か弱い乙女ですからー」

わざとらしくしなを作って、上目遣いで瞬きするいろはさんの姿に、思わず吹き出してしまう。

「いろはさんって、マスターと仲いいよね」
「そうですか?マスターが絡んでくるんですよ。カイトさんも、その内ウザくなりますから」
「そう・・・・・・そうかな。なるかな」
「なりますよー。今はまだ、猫被ってるだけです」
「そっか」

笑っているいろはさんを見ながら、自分もそうなれるだろうかと考えた。


大丈夫だろうか。大丈夫かもしれない。
きっと、大丈夫。