【かいねこ】桜の季節に共に笑おう
「カイトさん、ミカンどうぞ」
いろはさんが、ミカンの皮を剥いて、俺の前に置いた。
「ありがとう」
「どういたしましてー」
「おう、俺にもミカン寄越せ」
マスターが言うと、いろはさんは剥き終わった皮を手にとって、
「えー・・・・・・じゃあ、これどうぞ」
「渋々かよ。しかも皮かよ」
「マスターなんか、皮でも贅沢です」
「おい、これ以下ってなんだよ。筋か」
「あの、オレンジのネット」
「食えねえよ!」
相変わらずのやり取りを、ミカンを食べながら聞き流す。
「カイトー、俺にミカン剥いてくれ」
「え?」
驚いて顔を上げると、いろはさんがすかさず、
「マスター!カイトさんを使おうなんて、一生早いですよ!!」
「一生ってなんだ!この馬鹿猫!!」
「マスターなんて、オレンジのネットかじってればいいんです!!」
「さりげなく格下げすんな!!」
いつも通りの二人を尻目に、ミカンの皮を剥くと、
「はい、どうぞ」
いろはさんの前に置いた。
「きゃー!ありがとうございます!」
「ちょっ、何それ!カイトだけは、味方だと思ったのに!!」
「え、あの、あ、ま、マスターは大人だから、ご自分でどうぞ」
「酷い!!まだ人生の半分も生きてないのに!!」
床につっぷして泣き真似をするマスターの前に、ミカンを転がす。
「どうぞ」
「やだやだやだやだ!剥いてくれないと食べらんない!!」
「うざっ!!マジうざっ!!カイトさん、こんな人放っといていいですよ」
「せめてマスターと呼べ!!」
マスターもいろはさんもいつも通りで、そのことにほっとした。
大丈夫。大丈夫だ。
作品名:【かいねこ】桜の季節に共に笑おう 作家名:シャオ