【かいねこ】桜の季節に共に笑おう
少しずつ、マスターといろはさんのやり取りに慣れ、なんとなく、二人との距離も近くなった頃。
夕飯の支度をしようとしたら、チューブのわさびが切れていた。
「あ、わさびないや」
「買ってきましょうか?」
「ううん、いいよ。俺、行ってくるから」
買い物袋を手に、玄関に向かう。
「他に買うものあるー?」
「えーっと、あ、ウェットティッシュがもうないですー」
「分かったー。行ってきまーす」
声を掛けて、外に出た。
近所のスーパーで買い物を済ませ、袋に商品を詰めていたら、隣にいた女性が、甲高い声をあげる。
「やだー、雨降ってきた!」
つられて顔を上げると、確かに外は大粒の雨が降り、人々が足早に駆けだしていた。
しまった、傘持ってきてない。
いろはさんに迎えにきて貰う訳にいかないし、ビニール傘を買おうかと逡巡したけれど、走れば大丈夫だと腹をくくる。
買い物袋を抱え、右往左往する往来の人波に飛び込んだ。
作品名:【かいねこ】桜の季節に共に笑おう 作家名:シャオ