きらきら星 【後偏】
7
その日の放課後、俺はえりちゃんに呼び出された。
部活もあるので、部室棟の裏に来てもらうことにした。
『ごめんね。ちょっと気になることがあって。』
なんだか、いつもより漂っている空気が違う気がする…俺でもわかる。
『なんか、私たち付き合ってるのに、付き合ってる感じしないの。
ふみきくんは本当に私のこと好きなの??』
「えっ?」
即答できずに戸惑ってしまったのがいけなかったのか、
えりちゃんの顔はますます険しくなってしまった。
『好きじゃないの?』
「えっ、どうしたの急に…好きだよ?」
『じゃあちゃんと証拠みせてよ!』
えりちゃんはそういうと俺の襟元を掴んで、自分の方に引き寄せた。
俺は体勢が崩れたため、慌てて立ち直ろうとする。
すると俺の唇に…
えりちゃんの唇が重なった。
「!!」
女の子らしい柔らかい唇。
肌はそれを感じているはずなのに…
何で?
なんでこんなときに
君の顔を思い出すんだろう…
「…っ」
俺はえりちゃんの両肩を掴んで、できるだけ優しく離す。
えりちゃんの瞳には不安そうな色が見える。
そっか、ずっと不安だったんだよね。俺バカだから、また人を傷つけているのに気がつかなかった。
「…ごめん。」
そういうとピクッと肩が動いた。
「…俺自分のことわかってなかったみたいだ。
まだ自分の中で答えは出てないけど、気になっている人がいる。」
『…それって…?』
「えりちゃんにはすごい悲しい思いさせたし、ひどいことしたと思ってる…」
『でも、まだ好きじゃないんでしょ?』
「だけど、こんな曖昧な気持ちでえりちゃんと付き合えないよ。」
『私…責めちゃったけど、ふみきくんのこと嫌なわけじゃないよ。
焦っちゃっただけで…だからっ』
「ごめん―――」
作品名:きらきら星 【後偏】 作家名:野沢 菜葉