こらぼでほすと 一撃5
いは終了した。
「わざわざ、見舞いはいらんと言ったはずだが? アマギ。」
食卓についてから、トダカが、こらこらとアマギを叱る。こんなことぐらいで、わざわ
ざ本国から来るな、と、トダカは、メンバーにも注意した。
「それは無理というものです。あなたが、負傷したとなれば、気になります。我らとして
は、見舞いはお認めくださらないと立つ瀬がありません。」
「おまえも帰りなさい、アマギ。」
「それは無理というものです。明日から、雨ですから。」
アマギの言葉で、トダカも、ちらりとニールを見て苦笑した。そういうことなら頼むし
かないか、と、すぐに、アマギの滞在は認める。
「すいません、せっかく役に立てる時に。」
「天気ばかりはしょうがないさ。まあ、うちで、ゆっくりとしておいで、娘さん。」
トダカも帰す気はない。どこにいようと寝込んでいるなら、ここのほうが楽だろう。寺
の坊主は、女房の看護なんぞしてくれるようなタイプではない。実は、そうでもないが、
日頃の行いが悪いので誤解されている。
「三蔵さんよりは、アマギのほうがマシだ。」
「アマギさん、俺のほうは放置しといてください。転がって大人しくしてればいいだけな
んで。」
白身魚の蒸しものは、やわらかくて消化にもいい。安静だから、消化にいいモノを用意
するように、と、ドクターに言われた。それを、ぱくっとニールも食べて苦笑する。もち
ろん、飲酒は厳禁なので、食卓には酒の姿はない。
「まあ、適当に口に放り込んであげるさ。」
高野豆腐を、もぎゅっと噛んだアマギも、からかうようにそう言う。ニールは、沈没す
ると食べるどころか飲みもしないから、そこいらは、適当にする。シンやレイが、有無も
言わさずに口に放り込んでいるところを、何度か見ているから、アマギも、そうするつも
りだ。
「アマギ、適当じゃなくて、詰め込んでおいてくれ。うちの娘さん、自分が食べることに
は無頓着なんだ。」
「そうですね。これだけの料理ができるのに、そこが不思議です。」
お腹に優しい和食メニューが、何品か並んでいる。これを作っているのが、アイルラン
ド人なんだから、賞賛に値すると、アマギは笑う。
「食べてますよ? てか、トダカさん、俺、詰められるのはイヤです。」
「だって、うちじゃ、一番、食が細いだろ? そんなじゃ、回復しないよ? 娘さん。」
「ある程度、カロリーの高いものは食べないといけないんじゃないかな? ニール。」
ふたりして、ちゃんと食え、と、注意されると反論できない。実際、負傷しているトダ
カよりニールは量を食べないからだ。
「そろそろ、店は盛り上がってる頃ですね。」
話題を無理矢理、切り替えて、お茶を淹れるために、ニールは立ち上がる。それが、あ
まりにもわざとらしくて、トダカもアマギも大笑いする。
昨晩は、ナタルが、そろそろお酒もいいだろう、と、飲酒を許可してくれたので、ご機
嫌で呑んだ。とはいっても、仕事で酔っ払うわけにはいかないから、セーヴはしていたが
、それでも最後のほうの記憶は危うい。どうやって、私服に着替えたのか覚えがないが、
ベッドに転がっているということは、レイがどうにかしてくれたんだろう、と、ぬくぬく
と布団に包まっていた。
だが、その至福の時間は長く続かない。ぼすっと枕を取られ、布団も剥がされた。こう
いうとをやるのは、相方のレイだから、そろそろ学校の時間なんだな、と、目を開ける。
「シン、ちょっとトダカさんのところへ、俺は行って来る。」
「ふえ? 」
レイは、なんだか慌てている。何ごとだよ? と、意識を覚醒させたら、カーテンを開
けられた。
「雨なんだ。」
「えっ。」
外は、かなりの雨だ。銀の糸が、解るくらいに上から下へと流れている。それで、シン
も飛び起きた。雨はまずい。
「俺も行く。三分待ってくれ。」
あたふたと、そこいらの服を身に着けると、シンとは、待っていたレイと、部屋から飛
び出した。
寺のほうも、おサルさんは、その天候を見て、こっちも慌てて、八戒に連絡した。今日
は、一限目が必修で休むわけには行かない。しばらく、コールしたら、相手は、どうにか
出てくれた。
「わかりました。そういうことなら、あちらに連絡してみましょう。たぶん、アマギさん
あたりがいらっしゃると思いますよ? 悟空。」
「後で、連絡くれな? 俺、とりあえず、一時間目だけ受けたら動けるから。」
「メールをさしあげます。いってらっしゃい。」
そして、八戒の予想通り、アマギが滞在していることを確認して、メールはいれた。も
ちろん、アスランやレイ、シンのところにも送ったのだが、シンたちは、すでに、トダカ
家にすっ飛んで行く最中だった。こちらは、キラの誕生日パーティーで、忙しかったから
、天候の確認をせずに、ニールら任せてしまったのだが、八戒やアスランは、トダカーズ
ラブがフォローしてくれるだろう、とは、予想してはいたのだ。
「ママニャン、ダウンか? 」
メールを配信している八戒のとなりには、同じベッドに転がっている亭主がいる。おサ
ルさんの声が大きすぎて、携帯から声がはみ出していた。
「そうらしいです。アマギさんがいらっしゃるので、そちらは問題ないみたいですけどね
。」
「あれは、面倒だろうなあ。」
「とはいっても、天候は変えられませんからね。」
「なんか差し入れしてやるつもりか? 」
天候によるダウンの場合、八戒は滋養のある漢方薬を製作して、ニールに届けている。
まずかろうが苦かろうが、とりあえず、栄養補給させておかないとマズイから、それを有
無を言わさず呑ませることにしている。
「そうですね。それと、痛みが和らぐのも差し入れしておきましょうか。」
ぎっくり腰のトダカにも見舞いというか、同じ様に苦いのを用意することにした。気功
波を当てれば、普通は、それで治るのだが、トダカの場合は、いろいろと異物が埋め込ま
れているから効かない部位がある。
「そりゃいいな。けど、もうちょっと惰眠は貪りたいんですが? 」
「そうですね。出勤前に立ち寄れる場所だから・・・・あ、今日は休みでした。」
昨夜、真夜中過ぎまで騒いだので、本日、「吉祥富貴」 は、休みになっている。さす
がに、二日連荘で来る客はいないからだ。
「晩メシを外食するということで、いかがですか? イノブタ女王様。」
「それなら、悟空も誘いましょう。しばらくは、寺も貧しい食事でしょうから。」
「おまえ、三蔵も誘ってやれよ? 今、何気にスルーしただろ? 」
「たまには、女房の有り難味を噛み締めさせたほうがいいんです。」
「いや、やめてやれ。あいつに家事は無理だって。」
「そうやって甘やかすからダメなんですけどねー。ニールは、三蔵の我侭が、ちょうどい
いらしいんで、まあ、いいといえばいいんですが。」
手間のかかる坊主の世話が、寺の女房には、ちょうどいい相手だ。いろいろと用事を片
作品名:こらぼでほすと 一撃5 作家名:篠義