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野沢 菜葉
野沢 菜葉
novelistID. 23587
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My favorite place

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Side:T
「センター返し!」
「サード強襲!」
カキーンと透き通った音が響くと、合わせるようにボールが飛ぶ。

この瞬間がたまらなく気持ちいい!


「今日調子良かったね。」
はい、と栄口がドリンクを差し出してきたので手を伸ばす。
「マジで!?」
「うん、なんか昨日より打球が鋭かった。」
マジかぁ。俺も調子いいなって思ったけど、栄口から言われると一層嬉しさが増す。



俺はなんだかんだ中学でも高校でも4番バッターを担ってきたが、全然自分に満足なんかしていなかった。もっと強くなりたい、上手くなりたい、みんなと一緒に勝ち上がりたいってそう思ってる。

だけど、前に納得いく打撃が出来なくて、けれど何が原因かわからなくてモヤモヤしていた時があった。
その時はヤケになって球だけただ追っていた。すると、

「田島、一回機械止めていい?」
と栄口が話しかけてきた。
「ん?いいぜ。何?」
機械を止めて貰うと栄口は俺に近寄ってきた。
「お前今日やる気なさすぎ!上手くいかないからって焦るなよ。」
「…っ」
「オレもう一回見て、悪いところあったら指摘するから、落ち着いてやってみなよ。」

衝撃的だった。ちゃんと見てくれたこともだけど、そうやって指摘されたことが驚いたと同時に嬉しかったんだ。
それからも栄口は良い時は褒めてくれるし、悪いときはちゃんと指摘してくれた。
俺はその時から栄口のこと気になってて、いろんな所みているうちに、いつの間にか好きになってた。
最初は男なのにとか、いろいろ考えたけど、今は栄口だから好きなんだって納得してる。


好きって自覚してから、なんとなく栄口を目で追うようになった。
すると、時々ふといなくなることに気がついた。
俺みたいに毎日追ってなきゃ気付かないくらい、たまに、そしていつの間にかいなくなる。
先に帰ったとか、何か用事があるのかとか、普通だったら気にしないけれど、栄口の行動としてはあからさまにおかしい。用事があるにしろ、そう言うときの栄口は誰かしらに言付けることが多いから。

その理由がわかったのが、ある日の練習試合後のことだった。
家に一旦帰ったものの、暇だったので学校の周りをランニングすることにした。
走っていると、ふと部室棟の裏に誰かいるのに気がついた。
その時俺は、それが無性に気になって、学校内に戻って確かめに行った。

部室棟の裏で見たものは、なんと栄口だった。
膝を抱えてうずくまっている姿は、いつもの姿とは想像がつかないほど頼りなく、触れただけで崩れてしまうのではないかと思った。

思い切って声をかけると、初めは無理して笑おうとしていたが俺に通じないとわかると、観念したのか正直に話してくれるようになった。
栄口は「自分の気持ちを消化する」って言っていたが、その割には全然すっきりした表情じゃないし、栄口の性格上、自分を余計責めてるんじゃないかって心配になった。
好きな人のそんな辛そうな姿、俺は見てらんなくて、思わず抱きしめてしまった。
嫌がられるかなって思ったけど、栄口は受け止めてくれたみたいで、それから栄口の「1人反省会」に俺も参加するようになった。



***
「はい。」
って渡されたのは、最近発売されたっていうお菓子。
疑問に思って栄口を見ると、
「いつものお礼」
と言って、にこっと笑った。
(やべぇ。可愛い。)
その笑顔を俺に向けてくれんなら、お礼なんていらねぇのにな。なんて。
そんなこと言えるはずもないので、素直に「あんがと」って言って受け取った。

「それ、水谷がお勧めって言ってたんだ!だからきっとおいしいよ!!」
と嬉しそうに栄口が言うのが、なんか気に喰わなかった。
下らない嫉妬だってわかってるけど、水谷と栄口って仲良いし、水谷はしょっちゅう栄口に抱きついてるし、栄口もそれを嫌だって思ってないみたいだし…
胸の奥がモヤモヤする…考えれば考えるほど嫌な気持ちになる。
そんな気持ちを振り払うように、俺は栄口に問いかけた。

「なぁ、栄口って水谷のこと好きなの?」
「へっ?好きって??」
「だから、恋愛対象として好きなの!?」
「えっ!?」
栄口には予想外の質問だったのだろう。焦りながら、俺が言ったこと一生懸命整理してますって見える。

「水谷は普通に友達だよ!なんで?オレそういう風に見えた?」
「んー?なんとなく?」
最近俺は栄口が嘘ついてるのとか、なんとなくわかるようになったから、これは本当の気持ちなんだろう。
「じゃあ好きな人とかいないの?」
「今は…いないかな。」
「いないのかよ!あんだけ、女見てんのになー!!」
俺はホッとした気持ちを隠すように冗談を言うと栄口は真っ赤になって反論してくる。
こんなところも可愛いって思うなんて、俺重症だ。

「うっせーな!じゃあ田島はいんのかよ!」
「俺?俺いるよ!」
「えっ?」
これも予想外だったのか、栄口は言葉に詰まっている。
「めちゃくちゃ大好きな人がいる!!」
栄口に向かって言うと、それまでとは変わって大人しくなり、今度はおずおずと聞いてくる。

「そ…そうなんだ。告白とかしないの?」
「してーけど、ちょっと慎重にいかないとだめっぽいんだよな!でも、ぜってー振る向かせるし!!」

だから覚悟しとけよ栄口!!

作品名:My favorite place 作家名:野沢 菜葉