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風向きが変わるとき

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――そして、小学6年生冬。


 太一はますますサッカーが上手くなって
 女の私はだんだん太一の隣に並ぶことができなくなった。


 そして。


「太一。私、中学になったらサッカーやめるね」


 もうこれ以上太一といるわけにはいかない。

 私が一緒にいたら太一の方がダメになっちゃう。


「な、なんでだよ?
 俺…また中学でもお前とツートップ組めると思って…」


 …ほら。またそんな私を期待させること言う。


「お母さんがね、最近テニス教えてくれるようになったの。
 だから中学ではテニス部に入ろうかなって」

「…そっか、お母さんが…良かったじゃん!」


 お母さんとの仲は邪魔するわけにはいかない…か。

 優しいね…太一…


「だから…ハイ。」


 そう言って私が差し出したのはサッカーボール。

 いつも二人で練習していたときに使っていたもの。



「なんだよ?」

「返す。私にはもう要らないから」

「え?お、おい空…!」







「じゃあね、太一」









 太一に背を向けて私は歩き出す。

 後ろから太一の声が聞こえたけど振り向かなかった。


 そういえばあのボール…夏の冒険のあと
 『勇気と絆の印』って言ってお互いの紋章をペンで書いたっけ。

 もう太一と一緒にサッカーできないのか…


 そんなことを考えてると自然に私の頬を冷たいものが伝った。

 馬鹿、泣いちゃダメよ空!



 しかし、一度出た涙はそんなに拭いても流れ出てくる。
 
 私はその腹立たしい雫を乾かそうと全力で走った。

 何処に向かうのかは自分自身でも分からない。




 ただ…忘れたかった…



 凍える空気が私の体中を包む。

 顔が少し痛い。でもそんなこと考えている余裕はない。

 走り続けていないと頭の中は太一で埋め尽くされてしまう。



作品名:風向きが変わるとき 作家名:樹梨