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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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「今日もまた頑張ってるわねぇ」

 魔理沙が去り、今日もまた日課となり始めている腕立て伏せをしていれば、影が俺を覆う。

「まぁな。どうせやることも無いし、それなら強くなる為の近道をしたって構わないだろう」

 ふぅん、と興味無いように言った西行寺は突然しゃがみこみ、俺と目線を合わせて言う。

「ねぇ、貴方はどうしてそんなに頑張れることが出来るのかしら?」

「……ふむ」

 そう言う西行寺の顔は何時も通りの笑顔だが、その眼は真剣そのもので、心なしか敵意のような、冷たく突き刺さ視線が織り混ぜられていた。
 取り敢えずは話やすいように、腕立て伏せを中断し、中庭の縁側に腰掛ける。
 手招きをして西行寺を誘えば、西行寺はおとなしく俺の隣に腰掛ける。

「そうだなぁ、幻想郷は妖怪が跋扈する世界だ。何時妖怪に襲われて死ぬか解ったものではない。俺が強さを求めるのは、この幻想郷で生きる為だ」

「幻想郷で弱くても生きるなんて簡単よ。人里から出なければ良いだけだもの」

「それだけじゃあ生きていけないだろ? 何かあって人里を出る用が出来るかもしれない」

「ええ、確かにそう言うことも有るでしょうね。それでも、人里には自警団がいるわ。彼等に頼めば外に出ても守ってくれるわ」

「……西行寺、お前は何を俺に求めている」

 まるで俺が強くなることを拒むように、俺が間違っていることを諭すような西行寺。

「貴方は、自衛の為に強くなる。そう言っているのよね」

「そうだが」

「争うこと前提なのね、貴方は。平和的に話し合いとか無いのかしら」

「……ふむ、成る程。西行寺は博愛主義者なのか」

「まさか。私が少し力を出せば、それだけで皆死のわ。そんな奴等、相手にしたところで無駄なだけよ」

 そうか、西行寺が求めるのは、何故俺が争う事を自ら望んでいるのか、と言うことか。

「西行寺、俺は此処に来るまでに野犬に襲われた。彼等に話し合いなど通用し得ない。これから先、同じことが起こるかもしれない」

「それで? そんなのただの言い訳にしかならないんじゃなくて?」

「そうかもしれないな。だが、俺とて他者を殺したいわけではない」

「なら、何故他者を殺す力を求めるの?」

「これは俺のエゴだよ、西行寺。誰も殺したくないと言う俺自身の」

「どういうことかしら?」

 そう、これはただの俺のエゴだ。最低限、他者を殺したくないと言う俺の。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶