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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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「俺は、博愛主義者だからな」

「嘘は良くないわよ、風間。貴方からは血の匂いがするわ」

「お前は犬か」

 とか言いつつも、自分の腕を鼻先に持っていき匂いを嗅いでみる。……鉄臭いことはないが……。
 西行寺の言う血の匂いとやらは、嗅覚ではなく、第六感のような、感覚的なものだろう。それならば納得はいく。
 俺は、外の世界で血を浴び、ばら撒き、そして俺自身の身体に染み込み過ぎた。

「西行寺、俺は人間じゃない」

「あら、やっぱりそうだったの」

 おどけて言う西行寺。うーん、魔理沙には気付かれて仕方が無いと思っていたが、何故西行寺まで気付いていたんだろうな。
 まぁ、それは置いといて。

「俺は、人間に近い何かだ。それで在り続けたい」

「どうして?」

「人間になったら、もう戻れなくなりそうだから」

 俺が元の形に戻る。それは俺の完全な消滅を意味する。だけど、それで良いのだ。今までも、その姿で在り続けたから。

「俺が誰かを殺したらな、その時、俺は本当に人間になってしまう。それは嫌だ。だから俺は殺したくない」

 殺したら、俺は彼らと同じ、殺戮者になってしまう。
 そうしたら俺はもう、戻れなくなっちまう。

「本当に、貴方のエゴなのね」

「そうさ、俺はエゴ無しに生きていけない。人間と同じだ」

 人間であることを拒む人間なんだよ、俺は。

「それでも、貴方の本質は別。そうでしょ?」

 西行寺はまるで俺の心を読んだように、俺の言葉一つ一つの真意を完璧に汲み取っているかのように話す。

「そうさ。魂という概念は別物だ。ただのエゴにしか過ぎないんだよ」

「貴方は、人間になるのを恐れているのかしら」

「……」

 西行寺の言葉は胸に突き刺さるものがあった。
 それは、きっとそうなのだろうな。
 俺は、自己中心的な人間共を心から恐れている。何れ俺自身が、人間共に殺されそうで、泣きたくなるくらい怖いのだ。
 人間と同じ存在になるのも、同じくらいに。

「きっとそうだな。俺は人間に恐怖しているよ。心から」

「でも、それだけではないのでしょう」

「俺は人間を愛している。心から、壊れそうな程」

 この矛盾もまた、俺のエゴだ。
 俺は人間を愛し続ける。あの狂人共を。びくびくと怯えながらでも、俺はそうすることしか出来ないのだ。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶