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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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 妖夢が振り抜いた竹刀は、的確に俺の急所を狙った素早い一撃だった。
 本来ならば、妖夢の竹刀は獲物を確実に仕留めていただろう。だが、それはなかった。

「有りですかそんなの!」

「さぁどうだろうな!」

 竹刀を受け止めるのは、一本の木枝。折れた桜を盾にしたのだ。
 受け止めた竹刀を弾き、地面の竹刀を掬い取る様に宙へと投げ、棒きれの代わりに手に持つ。

「そんなの、実戦では通用しませんよ」

「いや、これとて模擬だろうが一種の実戦だろう」

 納得のいかない表情の妖夢。
 まぁ、妖夢の言い分も尤もだけどな。

「ほれ、俺からのプレゼントだ」

 と言いながら、妖夢に枝きれを投げつける。
「小癪な!」と叫びながら妖夢は枝切れを弾き飛ばす。
 其処には、既に竹刀を振る態勢の俺がいて。
 妖夢の目が見開かれる。俺の竹刀は振り切られた。
 ……振り切っただと?
 それは、獲物を切る事は出来なかったと言うこと。
 妖夢は、上体を反らすことでなんとか避けきる事に成功したのだ。

「あっ」

 全力で刀を振り抜いたのは、隙だらけと言うことで。
 妖夢はバック転をしながらもその足で俺を蹴りあげる。

「そちらがその気なら、こちらもそれ相応の対処をしますよ」

 体勢を整えた妖夢が言う。
 頭を振り、蹴りの衝撃から目を覚ませば、妖夢が直ぐ目の前に。
 驚きと同様が交じり、反射的に竹刀を突き出すが、狙いを定めていない突きが当たるわけもなく。
 妖夢が振う竹刀を屈んで避ける。髪の毛が斬圧で数本持っていかれる。
 必死で避けた先には、またも妖夢の蹴りが待ち受けていた。
 今度はさっきと逆に上体を起こすようにして避けるが、

「いっ!」

 妖夢は土を蹴りあげていた。その土は目に入り込み、視界を奪う。
 怯んだその隙には足払いを掛ける。
 成す術も無く、地面に仰向けに倒れ込む。
 危険。兎に角動かなければ。
 そう思い、転がって一先ず逃げようとするが、

「終りです」

 ぞくりと感じる冷たい死の気配。首筋に竹刀を当てられる。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶