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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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「いやはや、やっぱり妖夢は強いなぁ」

「伊達に何年と剣を振ってはいませんよ」

 模擬訓練は終り、休憩がてら桜の幹に腰掛け言う。

「なぁ、妖夢」

「なんでしょうか」

「前々から気になっていたんだが、それは一体なんだ?」

 『それ』と称して指を刺した先に有るのは、まるで大きな白玉に尾っぽが生えたような奇妙な物体。それは意思でもあるように、常に妖夢の近くをふよふよと浮遊している。
 こうして見ていると、なんだかペットのように可愛らしく思える物体。ちょっと触ってみたい。

「ああ、これは私の半霊です」

「半霊?」

「私は、生まれながらの半人半霊なんです。半分生きてて、半分死んでる。それは私の死んだ半分です」

 ほう、と短い納得の息とともに、改めて白玉を見つめる。
 これが、半分の『死』か。そうか、これは霊魂だったのか。

「こうしてみると、なんだか美味しそうな白玉だな」

「白玉って言わないで下さい! 幽々子様だって時折食べようとするんですよ」

「ははっ……は?」

 てっきり妖夢の冗談かとも思ったが、よく考えなくても、妖夢がそんなつまらない冗談を口にするか? 答えは否。
 ……西行寺、恐るべし子!「霊魂なんて、食べれるはずもなかろうに」

 しゃがみこみ、半霊と目線(?)を同じ高さにして言う。触ろうと手を伸ばすが、触れることなく、半霊の中に沈み込む。
 半霊の中は、人肌より少し冷たい程度の暖かさを持っていた。幽霊は冷たいと言うが、これは妖夢が半分生きているからその分暖かいのかね?

「幽々子様なら、可能ですよ。あの人も死人ですし」

 ばっと妖夢に顔を向ける。

「なんだと?」

「幽々子様は亡霊ですよ。ご存じ無かったのですか?」

「なんと……」

 そいつは驚いた。
 西行寺の元気そうな態度は、何一つとしてそんな様子を見せなかった。
 何より、形が違う。

「幽々子様は亡霊です。幽霊と
は違います」

「その違いは?」

「幽霊は、ただの死んだ生物でしか有りません。しかし亡霊は、それに加え強い念を持っています。もっと生きたいとか、誰かを恨んだり、死んだことに気がつかなかったり。そうした死人が、亡霊になるのです」

「西行寺もそうだと?」

「いえ、幽々子様はまた別です。と言っても、私も詳しくは知らないのですが」

 そう言う妖夢の表情は少し悲しげだった。
 それは、主人を哀れんでか、それとも――――。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶