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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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「あの、風間さん」

「どうした、妖夢」

 今日一日の修業は一先ず終え、夕暮れに紅く染まる桃色の木々を眺めながら、妖夢は言う。

「風間さんのその刀、見せて頂いても宜しいですか?」

 何かと思えば、そんな頼みごと。
 断る理由も特に無い。
 腰帯びに差した刀を鞘ごと抜き取り、それを妖夢に手渡す。その際、落としたりしないように少し注意して。

「抜いても?」

「どうぞ」

「失礼します」

 一礼しながら刀を抜く妖夢を見て、本当に良く出来た子だと思った。妖夢をここまで躾(しつ)けたのは一体何処の誰なんだろうな。西行寺では無いのは明白だが。だからこそ、気になってくる。この白玉楼には、妖夢の他には西行寺しかいない。西行寺では無いとすると……。考えれば、妖夢に剣術を教えたのもまた同じくして誰が?

「……ふん」

「風間さん?」

「ん、いや何でもない」

 所詮他人の家の事情。俺が関わることではない。

「これ、良い刀ですね。名前とかありますか?」

「あー……」

 ばつが悪そうに、頭を軽く掻く。そう言えば、香霖堂でその刀を譲り受けた時に、この刀に名前をつけようとは思ったものの、そのことはもうすっかり忘れていた。必然的に、未だこの刀に名前は無くて。

「どうしたのですか?」

 そんな俺の様子を不審に思ったのか、妖夢がそう問いかけてくる。

「いやー、その刀には名前が無くてな。うん、丁度良い。今付けてやろう」

 未だ妖夢が持つ刀に眼を落とす。
 鏡のような白銀の刃に、血を飲み込んだかのような赤い刃文。

「よし、こいつの名は『鬼灯(ほおずき)』だ」

「鬼灯、ですか。良い名前ですけど、どうして鬼灯に?」

「鬼灯はな、日本のお盆に、死者の霊を導く提灯として飾られることがある。だから、こいつに斬られて死んだモノが、霊になって俺を襲わぬように、ちゃんとあの世に送ってくれるように、その名にしたんだ」

 と言うのは後付けで、本当のところは只単に刃文が赤いからである。
 俺は、誰かを殺そうとなんて思っていないからな。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶