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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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「ふぁ……」

 と欠伸(あくび)が一つ漏れ出る。
 縁側に腰掛け、桜の庭を一所懸命に掃除する妖夢を見つめて退屈と倦怠感と平和を感じる。
 霊夢の頭から取ったとか言う春の陽気にやられたか、俺も霊夢みたいに頭に春が沸いてきたか?それはなんとも深刻な問題だ。急いでなんとかしなければ。

「とは言いつつも、特にやることもなく」

 暇を持て余すのであった。
 幻想郷は平和過ぎる。この調子では平和ボケしてしまう。白玉楼の外に出て、妖怪に襲われたりでもしたら一溜まりもないだろうな。

「そうならないように、修業しているのになー」

 なんじゃこの矛盾は。

「ふわ……」

 と欠伸がまたも漏れ出る。
 だが、これは俺が出したものではなく、何時の間にか隣に座る西行寺のものだった。

「本当に、退屈ねー」

「春が深いのが原因か、元々白玉楼がそうなのか」

「幻想郷自身がこうなのよ」

「あー、平和最高。この世界に来て良かったなー」

 と上機嫌に鼻歌を交えて言う。
 この平和は本当に良いことだけど、毎日それが続くと退屈なのだ。
 だから、平和が壊れない程度に、小さな何かが起こって欲しいと、そんなことを望んでみたりする。

「あ、そうだ、西行寺。少し聞いても良いか?」

「何をかしら?」

「妖夢は、誰からあの剣術を教えてもらったんだ? 魂魄流と言う流派らしいが、それなら教えた人物がいるのだろう。だが、白玉楼では西行寺と妖夢しか見ないし」

「ああ、それは妖夢の祖父よ」

「妖夢の?」

「ええ、あの人は妖夢と同じように庭師として此処にいたのよ。けど、ある日悟りを開いちゃったみたいで、幼い妖夢に後のこと全部押しつけて行方不明になっちゃったのよ」

 成る程、あとはこの西行寺と生活していれば自然とあの真面目な性格が定着するものか。
 悟りを開いた、か。
 妖夢の祖父は、悟りを開いたその先に何を見たのだろうか。妖夢を放って、庭師と言う自分の役目を捨ててまで、彼はこの地を去った。
 相変わらず、天啓を得た人間の考えることは理解出来ない。
 彼等は何を見て、何を思い、何故自身の居場所を捨てるのか。妖夢の祖父とて、何を思い、妖夢に全てを任せたのだろうな。
 それを知るのは、彼だけであり、俺が知る由も無い。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶