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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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 抜いた鬼灯を半ば引き摺るように、弾幕を避け、時に被弾しながらも突き進む。被弾した弾幕は爆ぜるが、少し痛い程度のもので耐える事は出来る。
 強引に押し進む先にあるのは、弾幕の発生源である異空間。
 狙うは、あの異空間の先だ!

「うらぁ!」

 鬼灯は、異空間に吸い込まれるように真っ直ぐに貫いた。

 ――――静寂。

 あの無限の弾幕の放射は収まり、新たな異空間が生まれることもなく、全てが時を止めたかのような静寂だけが響く。
 何処か異様な雰囲気からか、身体は動かず、鬼灯を異空間に突き出したままで固まる。
 静かに舞い踊る桜の花びらが、鬼灯に触れる。花びらはまるで吸い付くかのように鬼灯の上で静止した。
 額を流れ、頬を滑り、顎から垂れる汗。
 汗がとうとう顎から離れ、宙を落ち、地面にぶつかり、幾数の滴(しずく)となった時、『それ』は
始まる。

――――ずっ。
 
何処から聞こえたその音。まるで、五臓六腑を引き摺る様な音。そんな気味悪い音に怯むように、鬼灯を抜いて異空間から距離を取る。
 何が起きている?
 何処か息苦しさがあり、自然と呼吸が荒くなる。汗は相変わらず止まらないが、何故か身体は寒気を訴える。
 何より苦しいのは、心臓の鼓動が速いこと。

「何が――――」

 何が起きると言うのだ?
 まだ起きていないその現象にこうまで怯えるのは、動物の生存本能が為(な)すものだろう。
 異常を訴える五感。そして、今すぐ逃げろと叫ぶ六感。

 ――――ずっ。

 再び響くその音。見れば、鬼灯を突き出した異空間が閉じていく音だった。
 ……静寂。
 これで終りなんて筈が無い。何故なら、未だに感覚は異常を訴えているから。

 ごぱぁっ!

 それはまるで津波のような音だった。
 其処に在るのは、相も変らぬ異空間だが、その数が桁違いに増えていた。
 その数は数千にも及ぶだろう。
 異空間は俺を完全に取り囲むように作られていた。
 ――――そうして、合図が有ったかのように、全ての穴から、一斉に弾幕が狂ったように飛び出してきた。
 そんなものを避けることなんて不可能だった。異空間が現れた時にはそれを察し、既に諦めていた。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶