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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 3

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「……やっぱり痛いな」

「我慢してください」

 妖夢に案内された一室にて、妖夢から怪我の治療を受けていた。
 妖夢は手際よく俺が巻いた血濡れの布切れを解き、消毒し、ガーゼを当てて包帯を巻いていくが、消毒液が滲みるわ、少し触れられただけで傷に響くわで、痛覚を刺激される。
 治療のためだから止むを得ないことだが、それでも痛いものは痛い。

「そもそも、此処まで歩いてこれたのですから、今更何でも無いでしょう」

「いや、そうだが」

 母親が子供に諭すような口調で言われては、返す言葉も無く。

「終りました。私はこれから幽々子様に風間さんのことを伝えてきますので、暫く待っていただけますか」

 妖夢はそう言って、部屋を出て行く。
 そうして一人になったわけだが、特にやることもなく、落ち着きもせず。
 部屋を見渡しても、ごく普通の和室と言ったようで、伽藍胴としていて特に面白そうな物もなく。
 どれそれじゃあ、と言わんばかりに、外に面する障子を開ける。

「おお、これは絶景」

本殿は中庭を囲むようなコの字型になっており、その中庭は枯山水の中に、松の木が植えられている。その奥に低い塀。『和』を強調し重んじた『作品』であろう。
 中庭の先、コの空いた穴の先には低い塀が有り、その先は桜の木々で埋め尽くされていた。
 何故あの木々が桜かと解ると言えば、その桜の木々が花を咲かせているから。

「……ん?」

 そう言えば今は冬。桜は春の暖かい陽気に当てられ咲く筈だ。この時期に咲くのはおかしい。
 この白玉楼にきてから、気になっていたことがある。
 それは、暖かいと言うこと。そこそ、春の暖気のように。
 此処は冥界である。先程まで俺がいた世界とは違う。だから、暖かいとでもいうのだろうか。

「……んー?」

 それでも、俺が持つ『あの世』のイメージとは異なる。
 冥界と聞けば、其処はおどろおどろしく、薄暗く気味の悪い、と言うイメージが有った。だが、此処は正反対だ。
 暖かい春の陽気に包まれ、来た者を優しく包みこむような美しい桜の木々。そうだ、此処は極楽浄土だ。
 同じあの世でも、天国と呼ばれるような。
 まさか、此処がそうだとでも言うのか。
作品名:東方無風伝 3 作家名:国城 龍耶