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家庭教師情報屋折原臨也9-1

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 一つ階を上がるだけで婦人服とは雰囲気はがらりと変わり、紳士服売り場は比較的静かだった。人の数も減っている。静雄は知らないうちに入っていた肩の力を抜いた。
「さて」
何を買おうか。通路に沿って様々な店に視線を向けていくと、コートやジャケットがよく目に入る。どれもセンスの高さがうかがえるが、どう考えても買い手は社会人だ。学生の買えるものではない。インナーを見ても何がいいのか全く分からない。敢えて持っていなさそうなものを贈るのも一つの手かもしれないと思ったが、それは何となくプレゼントではない気がした。さらに細かく見ていくと、装飾品のように置かれたマフラーに目が留まった。そういえば臨也は好んでフードつきのコートを着る割にハイネックのインナーはあまり着ていなかった、と静雄は思い出した。
―――よし、マフラーにするか
ものが決まれば話は早い。クリスマスにちなんで緑にするか、赤にするか、無難に紺色にするか。順に店を見まわっていくなかでノルディック柄も見つけた。だが、似合いそうにないなと思った。でも鹿とかがついたのを巻いていたら、それはそれで可愛いかもしれない。
―――って、可愛いは違う
静雄は頭を振った。慌てて別の柄に目を動かした。そこで無地が目に入ったが、少しさびしかった。着ている服が無地だから柄は合った方がいい。アーガイルかチェックが妥当だろうか。いつも黒い格好ばかりだから黒や灰色は避けよう。そう思っていると深い赤色に黒と緑のアーガイル模様の入ったマフラーを見つけた。
 ――― よし、これにしよう
あまりに悩んでいては決まるものも決まらなくなる。そう思い静雄はそれを手に取った。念のため値段を確認するとマフラーの相場より若干高くはあったが買えないわけでもなかった。
「プレゼント用に包装しますか?」
店員に尋ねられ、静雄は一つ頷いて提示された見本の中からあまり華美でないものを選んだ。
 包装されたプレゼントはさらに紙袋に入れられた。それを受け取って店を出て、携帯を取り出してメールを打ちながら下りエスカレーターの方に向かうと、偶然にも幽が立っていた。あの後すぐに決めたのだろう。肩には最後に見た店のロゴプリントが入った濃い桃色の不織布の袋を提げていた。
「思ったより早かったね」
「まぁ、買うものが決まったからな」
携帯をポケットにしまい、静雄は下りエスカレーターに乗ろうとしたところ、幽に腕を引かれた。
「どうかしたか?」
「兄貴の分も」
「いや、別に良いって」
断ろうとしたが、幽の目は真剣そのものだった。その様子に静雄は折れ、手を引いたまま歩き出した幽に必然的について行った。