家庭教師情報屋折原臨也9-1
買い物は昼過ぎまでかかった。折角買ってもらったのだから何か自分も返すと言ったところ、手料理が食べたいと言われた。本当にそれでいいのかと問い直したがそれでいいの一点張りで、じゃあ約束だと指切りをしたところで、近くの喫茶店に着いた。
昼食というにはいささか遅い食事をしていると、不意に幽の携帯電話が鳴った。その電話を受けながら少し表情が曇ったのを見て、仕事の内容だろうなと静雄は推測した。人気の俳優なのだから仕方がないと思う反面、やはりさびしさは感じてしまう。強行して買い物に出かけられたのは運が良かったかも知れない。
電話を切ると、予想通りマネージャーからの電話で、打ち合わせが入りすぐに戻らなくてはいけないようだった。行ってこいと静雄は手を振った。
「本当ごめん」
「そんなに謝んなくてもいいって。買うもんは買ったし、あとは帰るだけだからよ」
グラスに残っていたオレンジジュースを空にして、静雄は席を立った。後を追うように幽も席を立ち、勘定を済ませて店を出た。
外は午前以上に増えており、様々な袋を持った人が流れを作っていた。
「じゃあね」
「またな」
軽く挨拶を交わして、静雄は幽を見送った。マネージャーが近くまで来ていたようで、そのまま車に乗り込み走り去っていった。
作品名:家庭教師情報屋折原臨也9-1 作家名:獅子エリ