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赫く散る花 - 桂 -

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 ふいに銀時が立ちあがった。
「……客用の布団ってどこだ?」
 今までの話とはまるで関係のないことを聞く。
 だが、桂はそれに応えることにした。
「隣の部屋の押し入れのなかだ」
 寝室にしている隣の部屋を指差す。
 銀時はうなづいた。
「わかった」
 返事すると同時に身体の向きを変え、寝室へと歩き出す。
 その銀時の背中を見て、発作的に桂は立ちあがる。
「銀時」
 名を呼ぶと、銀時は立ち止まりふり返る。そして、少し首を傾げた。
 桂は近づいていく。
「こっちを向いてくれないか」
 至近距離で足を止め、そう頼んだ。
 銀時は訝しげな顔をする。
「……向けてるけど?」
「顔だけじゃなく、全身を、だ」
 強い調子で桂は言った。
 すると、銀時はわけがわからないといった表情で桂のほうに向き直った。
「これでいいか?」
「ああ」
 うなづいた後、桂は口を閉ざし、動かないでいた。
 迷っていた。
 次の行動を起こしてもいいのか逡巡していた。
 こんな時にはなんと言えばいいのかわからない。いくら言葉を探してみても見つからなかった。
 けれど、なにもせずにはいられない。
 だから。
 足を踏み出して距離を詰める。息すら届きそうなほど近くに立ち、眼を伏せた。
「同情か?」
 銀時は聞く。その腕が桂の背中にまわされる。
「ああ、そうだ」
 力強く引き寄せられて、桂は銀時にもたれかかった。
「今だけだからな」
 そう銀時に告げ、腕をあげていく。このまえの時のように途中で下ろしたりはせずに、そっと銀時の背中にまわす。
 温もりが伝わってくる。












作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio