赫く散る花 - 桂 -
三、
宣言通り、銀時は毎日桂の家にやってきた。
桂が万事屋に立ち寄った時にいれば家まで送るし、そうでなければ家を訪ねてくる。
家に来られると、桂は茶の一杯でもとなかに入れた。
そして、銀時は茶を一杯だけ飲んで、帰る。
それが日常となっていた。
もちろん、その間も津倉屋惣兵衛についての調査は進んでいた。
桂は惣兵衛と懇意の政府高官の天人とつながりのある宇宙船を調べあげた。辺境の星で転生郷を仕入れてひそかに地球まで運んでいる船があるはずだった。しかも、海賊船ではなく、政府公認の船が。そして、それらしき船が判明すると、地球に来る周期を調べた。
さらに、惣兵衛の屋敷で働く新八と神楽が良い情報をもたらした。惣兵衛は定期的に夜になってから部下を呼び寄せて出かけると使用人仲間から聞いてきた。その惣兵衛の出かける日はいつも、桂が眼をつけた船が地球に到着した日の翌日だった。
やがて、問題の船が久しぶりに地球に降り立った。
「これだけあれば、かなりの儲けになるのお」
爬虫類に似た顔の天人が満足そうな顔をして言う。
その天人のまえには木箱がいくつも積みあげられている。
「津倉屋、わかっておろうな?」
隣に立つ惣兵衛を天人はチラと横目で見る。
惣兵衛はうなづいた。
「はい、わかっております。これまで通り、利益の一部は献上させていただきますので」
「よしよし、お前は本当に役に立つ」
天人はにんまりと笑う。
ふたりを宇宙船の乗組員らしき天人たちが遠巻きに見ている。
その時。
「へえ、これが例のブツですかィ?」
いつの間にか木箱の近くに男が立っていた。男は惣兵衛の部下のようで、黒いスーツに黒いサングラス、黒い帽子を着用している。
しかし。
惣兵衛が険しい表情でまえに一歩出る。
「貴様、何者だ?」
自分の部下ではないと判断したらしい。
だが、惣兵衛に問いかけられた男は答えず、右手に持っていた木刀を両手に持ち直した。さらに、それを木箱に叩きつける。
「なっ、なにをするんだ!」
天人が慌てて叫ぶ。
木箱は壊れ、なかに入っていた袋の何個かは破れてしまい、白い粉があたりに飛び散った。
「転生郷、だな」
男はそう言うと、惣兵衛と天人のほうに向き直った。
「あんた、俺が誰だかたずねたよな。清吉の遺志を継ぐ者と言えばちったあ事情がわかるかィ?」
「なんだと!?」
清吉の名を聞いた途端、惣兵衛は顔色を変えた。
男は目深にかぶっていた帽子に手をやり、脱ぎ捨てる。銀時だ。
作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio