赫く散る花 - 桂 -
唇に唇がやわらかく押しあてられる。
感触を確かめるように動くと、離れる。吐息が肌をなでる。
次の瞬間には、また唇を重ねる。
離れては、重ねる。繰り返すうちに桂は腕を銀時の肩にまわしていた。
好きだ。
そんな感情が伝わってきて、同じように好きだと思う。
舌が入ってきて、桂のそれに触れ、絡める。
眩暈がする。
心臓が。
心が。
ぐらぐらと激しく揺れている。
好きだ、と思った。
やがて。
唇が離れ、銀時がすっと身を退いた。じっと桂を見る。しばらくして、なにか決心したような顔になり口を開く。
「……帰るわ、俺。そうしねェとお前を襲っちまいそう」
銀時はさらに一歩下がる。
だが、眼は桂をとらえたままだ。
桂はため息をひとつ吐く。そして、真っ直ぐに銀時を見た。
「泊まっていけばいい」
「だから、それはヤバいんだって」
「それでも構わない」
そう桂が告げると、銀時は一瞬黙りこんだ。真剣な表情になり、睨んでいるような強い視線を桂に向けた。
「お前、自分がなにを言ってるのかわかってんのか」
「わかっている。俺は抱かれるほうなんだろう?」
「じゃあ、なんで。まさか経験あるのか」
「冗談ではない。男に抱かれたことなぞない」
「なら、もうちょっと、こう、ゆっくりっていうか」
「ずいぶん悠長なんだな」
桂は皮肉っぽく言う。
別に抱かれたいわけではない。
想像すると、正直、相手が銀時であっても嫌悪感がある。
ただ、どうしても確かめておきたいことがあった。
「だが、明日になればエリザベスが帰ってきているかも知れないし、それに俺の気だって変わっているかも知れん。それでもいいのか」
挑むような眼差しを銀時に向け、たずねる。
すると。
「それは、困る」
銀時は足を踏み出し、近づいてきた。
作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio