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赫く散る花 - 桂 -

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 桂は混乱する。
「……お前も一緒なんだな!」
 あと少しで唇が触れる寸前に、桂は吐き捨てた。
「あいつらと一緒だ、そうやって力ずくで、俺を押さえつけて」
 頭のなかに、あの四人に襲われた記憶が鮮明に浮かびあがる。
 四人がかりで押さえつけてきた、忌まわしい記憶。
「俺の心なぞどうでもいいんだ。だから、そうやって無茶苦茶に踏みにじる」
 四人のうちのひとりは桂の顔を殴った。
 すると他の者は、顔は殴るなもったいない、と言った。
 彼らにとって重要なのは桂の顔だけなのだ。それ以外の身体の部位も、そして心も、蹂躙してしまっても構わないものだったのだろう。
 悔しいと今でも強烈に思う。
 桂は銀時を見据える。
「お前は違うと思っていた。お前だけは違うと思っていた」
 激しい怒りが胸のなかで荒れ狂い、恐怖心は消え去っていた。
 視線を逸らさずに言う。
「信じていたのに」
 しばらく、お互い無言で睨み合った。
 先に眼を伏せたのは銀時で。
 銀時は桂から手を放し、壁のほうに移動させる。
 まだ両腕に行く手を阻まれたままだが、桂は少し安堵する。
 しかし。
 次の瞬間、銀時は両の拳を壁に打ちつけた。ガンッッと大きな音が響いた。
 顔の近くで発生した音であったので、さすがに桂は肩を震わせた。
 脅すつもりなのかと思い、鋭い眼差しを銀時に向ける。
 そして。
 息を呑んだ。
 銀時が泣いていた。
 静かに涙を流して。
 桂の心臓がどくんと一度大きく波打った。
 驚きで言葉を失い、頬をつたう涙をただ見つめる。
 どうして、と思った。
 ふと気づくと、右手を腰のあたりまで上げていた。銀時のほうへ伸ばそうとしていた。だが、少しして、手を下ろす。応える気がないのなら、優しくしないほうがいい。そう考えたからだ。下ろした手のひらを堅く握る。
 その時、銀時の手が壁から離れた。
 さらに銀時は後退すると、踵を返した。桂に背中を向けて去っていく。
 桂は部屋から出て行こうとする銀時の姿を眼だけで追う。口を閉ざしたままでいて、名を呼ぶことすらしなかった。
 銀時がいなくなると、桂は壁に頭を預けた。そして、眼をつむる。
 どうして、とふたたび思った。


















作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio