赫く散る花 - 桂 -
その夜、夢を見た。
桂のまえを娘が歩いていた。
彼女だった。
時折、彼女は桂をふり返った。けれど、その顔には影が落ちていて、どんな表情をしているのかがわからない。
笑っているのならいいのだが。
彼女には笑っていてほしかった。
彼女の明るい笑顔が好きだから。
そんなふうにふたりで歩いているうちに突然、行く先はどこなのかと桂は疑問を抱いた。どこに行くつもりなのか思い出せない。
あたりは深い霧が立ちこめていて、ここがどこなのかもわからない。
桂が苛立っていると、彼女はまたふり返った。
そして、彼女の唇が動いて。
「 」
と、桂に告げた。
作品名:赫く散る花 - 桂 - 作家名:hujio