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天の花 群星

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「いてーな、やめろ」
 その圧勝をもたらした策士は自分の肩を叩く男に向かって、噛みつくように言った。
 すると、坂本は叩くのをやめたが、その代わりに、高杉の肩を抱いて自分のほうへ引き寄せた。
「花より団子、花火より酒じゃ〜。それに、ちっくと寒くなってきたがやき、家に帰って宴の続きじゃ〜」
「帰るならてめーひとりで帰れ! 放せ!」
 小柄な高杉は長身の坂本に捕らえられているのを振りほどこうと暴れた。だが、うまくいかないようだ。
「酒じゃ〜、酒じゃ〜」
 坂本は陽気に騒ぎながら、高杉を引っ張っていく。
 やがて高杉は抵抗するのをやめた。
「……まァ、秋の花火なんざ、見てても寂しいだけだからな」
 そう捨て台詞を吐いて、坂本とともに去っていった。
 残された銀時と桂はしばらく無言だったが、高杉と坂本の姿が見えなくなると口を開いた。
「あれは負け惜しみだな」
「ああ」
 銀時はうなづく。
 そのとき、また花火が打ちあげられた。
「……だが、確かになんか寂しいいっちゃ寂しいかもな」
 冷たい風の吹く夜の帳に大きく開いた色鮮やかな光の花を見あげ、銀時は思ったことをそのまま口にする。
「そうか?」
 隣で桂が言う。
「俺はこれはこれで風情があっていいと思うが」
 その声を聞いて、桂が少し笑っているような気がして、銀時はつい隣を見た。
 やはり、桂は頬にかすかな笑みを浮かべていた。
 銀時はすぐに眼を逸らし、その眼を夜空へと向ける。
 ふと頭に、この村へ来るまえに高杉の言ったことがよみがえった。
 一石二鳥、三鳥、四鳥ってとこか。
 綺麗な顔をしてるくせに、一番腹黒いじゃねーか。
 そう高杉は言ったのだった。
 一石四鳥と高杉が言ったのはおそらく、村人に食糧を分けることにより家を宿として借りることができること、戦で村人の協力を得られること、それにより奇策を用いることができること、そして戦に勝つこと、の四点ではないだろうか。
 村人に食糧を分け与えることで損をしているようだが、自分たちの運んできた食糧は籠城することを想定したものであり、もしも籠城してそれが長期化した場合は足りなくなる恐れもあったことを考えれば、まったく損なぞしていないのである。
 ただし、桂が村人に食糧を分け与えることにしたのは、そうした損得勘定のみではなかったのではないかと、銀時は思う。
 もちろんそうすることにより自軍の得となると見通したからでもあるだろうが、困窮している農民を助けたいという気持ちもあったのではないだろうか。
「銀時」
「なんだ」
「おまえのおかげで戦に勝てた。礼を言う」
「なに言ってやがる。テメーが礼を言わなきゃならねーのは俺じゃねーよ。一番活躍したのはこの村のヤツらだろ」
「ああ、確かにそうだな」
 そう言って、桂は愉快そうに笑う。
 そのとき、また、夜空に花火が打ちあげられ、そしてそのあと、轟音があたりに響き渡った。
作品名:天の花 群星 作家名:hujio