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天の花 群星

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「貴様は野宿では眠れないほど繊細ではなかろうよ」
「んなこたァねェ。俺ァ繊細だ。取り扱い注意の貴重品なんだよ」
「貴様の繊細の定義がさっぱりわからんな。それに、正しくは、取り扱い注意の危険物だろう」
「なんだとコラ。だれが取り扱い注意のわいせつ物だっつーんだよ」
「だれもそんなことは言っていない」
 そんなくだらないやりとりをしながら山道を進んでいるうちに、ふと、前方から声があがり、志士たちの足が止まった。
 異変である。けれども危機ではないと銀時はあたりの様子から判断した。
 案の定、前方から志士たちをかき分けるようにして銀時と桂のまえにやってきたのは敵ではなく同じ軍の仲間だった。それも、斥候として状況を探るために軍を離れ、先に目的地へと駆けていった者だ。戦装束に近い格好の銀時たちとは異なり、旅の僧侶に変装している。
 斥候を務めた志士は礼をした。
「ただいまもどりました」
「ご苦労。それでなにか収穫はあったか」
 桂がまず労をねぎらってからたずねる。
「はい」
 墨染めの衣を着た志士は厳しい表情のままうなづき、折りたたまれた紙を取りだした。その紙は桂のほうに差しだされる。
 桂はそれを受け取り、広げた。
 地図だ。
 銀時は地図を覗きこむ。
 後方にいたはずの坂本と高杉もすぐそばまで来ていて、あたりまえのように地図に眼を落としていた。
「天人軍の本陣はこのあたりにあります」
 斥候を務めた志士は地図に朱色で丸印のつけられた地点を指し示した。山の麓にある城の北西の方角に位置する平野に天人軍は本陣を構えているようだ。もっともそれは予想していたとおりであるが。
「それで戦況はどうだ」
 高杉が問うた。
「この城は要害堅固で、天人軍は攻めあぐねているようです」
「兵糧攻めはしてねェのか」
「もちろん天人軍は城への兵糧搬入路を断ちました。しかし、水源までは断っていない様子です。また、私が城内の者と接触して話を聞いてみたところ、食糧や武具の備蓄は充分にあるとのことでした」
「そうかい。そいつァいいこった」
「むしろ天人軍のほうが食糧不足に陥ったようです。なにしろ大軍なので、運んできた食糧もすぐになくなってしまったようです」
「食糧の補給路を事前に確保しておかなかったのか」
 そう桂は眉をひそめて聞いた。
「そのようです。どうやら簡単に攻め落とせると思っていたようで」
「バカな。城攻めは時間のかかるのを覚悟しておくのが常識だろう。だからこそ、上兵は謀を伐ち、その次は交を伐ち、その次は兵を伐ち、その下は城を攻む、攻城の法はやむを得ざるとなす、と言うのではないか」
「天人のヤツらは孫子なんざ知らねェだろ」
「知らなくとも考えてみればわかるはずだ。だいたいヤツらは城を攻めるのはこれが初めてというわけではなかろうに」
「だが、敵が間抜けなほうがこっちにしてみりゃありがてェんだから良かったじゃねーか」
 高杉は右の口角だけをあげてあざけるように笑う。
 ふいに。
「ほいたら敵軍の兵はみんな腹空かして戦えんぐらいになっちゅうか」
 坂本がのんびりとした様子で口をはさむ。
「いえ」
 たずねられた志士は首を横に振る。
「天人軍は、ちょうど私たちが今いるこの地点から山を西側に下ったところにある村を襲撃し、食糧を略奪したそうです」
「善く兵を用うる者は糧を敵に因るって言うからな」
 高杉はまた右の口角だけをあげて笑う。
作品名:天の花 群星 作家名:hujio