天の花 群星
その夜、天人軍は宴を開いた。
たったの数騎が相手とはいえ勝ったこと、彼らがそんな危険をおかしてまで食糧を取りにいったことから籠城側の備蓄が尽きかけていると推測できること、置かれていた食糧の中に酒が大量にあったことが理由だった。
天人軍の兵は酒を浴びるように呑み、浮かれ騒いだ。
宴もたけなわとなった頃。
「オイ、なんかあそこにいねェか」
「あー?」
攘夷軍が駐留している村の方角になにかがあらわれた。
それは攘夷軍の兵だった。
攘夷軍の兵が十数騎、馬を駆って、あっという間に迫ってきた。
その十数騎は大軍である天人軍にひるまず、むしろ勢いを増して突っ込んできた。
天人軍の兵はみな酔っぱらっていて、反応が遅れた。
そして、数でははるかに劣るその十数騎に蹴散らされた。
だが、武器を手にして立ち向かった天人兵も少なからずいた。
「待て、貴様ら、俺が相手だ!」
彼らは勇ましく斬りかかっていった。
けれど、ことごとく馬上の攘夷兵に倒された。
十数騎の中でも特に、先頭を行く者がおそろしく強かった。攻撃してくる天人兵がいれば、すれ違いざまにほとんど一撃で斬り捨てていった。
その武神の如き攘夷兵の髪は、銀色だった。
敵陣に突っ込んできた十数騎は数を減らすことなく山のほうへと駆けていった。
しかし、たったの十数騎である。放っておいても良かった。けれども酔っていてあまり頭がまわらない天人兵が多かった。仲間が斬られた怒りもあった。天人兵の一部は十数騎を追って山を駆けのぼった。
すると。
「オイ、あれ……!」
前方から大きな石がたくさん転がり落ちてきた。
天人兵たちは息を呑んだ。
あんな大きな石にぶつかってこられれば、大怪我をするだろう。
だが、避けようもないぐらい、石が落とされる地点は広範囲にわたっていた。
さらに矢まで飛んできた。
「に、逃げろッ」
十数騎を追って山へのぼった天人兵は、大慌てで来た道を引き返した。
平野に残っていた天人軍の将のもとへ走り、報告した。
「山に攘夷軍がたくさん潜んでいます!」
「どうか援軍を……!」
天人軍の将は即座に決断した。
「よし、わかった!」
兵全員に山へと向かうよう指示した。
こちらは大軍である、勝てると思っていた。
天人軍は一斉に山へ向かった。
そして、上から石や矢が飛んでくる山へ猛然と駆けのぼり始めた。
そのとき。
背後から、太鼓や鉦を打ち鳴らす音が聞こえてきた。
驚いてふり返ると、そこに攘夷軍がいた。
それも大軍だった。