東方無風伝 4
「にぃっ!」と気合いか悲鳴か、そんな一声と共に接近してくる赤い弾を避ける。
赤い弾はつい先程まで俺が居た位置を通り過ぎて行く。
それを視認してから顔を前に向ければ、其処には青い弾が。
左脚を引き、半身にすることで寸前のところで避ける。
次に気が付けばまた赤い弾が俺を狙って。それを避ければ直ぐ様青い弾が襲ってくると避け続けていれば、放たれる弾幕にパターンが有るに気がつく。
リリカが放つのは赤い弾と青い弾の二種類。それぞれが決められた飛び方をしているようだ。
赤い弾は、集中的に俺自身を狙って飛んでくるもののようだ。
青い弾は、リリカを中心に俺を目掛けての扇状に放たれている。
赤い弾を避ければ、次には扇状に放たれた青い弾を避ける。青い弾で移動出来る範囲を狭め、また赤い弾で俺を狙う。
「ふっ!」
横に飛び込み前転をして赤い弾を避ける。次には青い弾が来ると解りきっているから、何処ならば安全にその次の赤い弾を誘導出来るか、一瞬で判断し駆け込む。
リリカの弾幕は実に嫌らしい。
赤い弾は先に俺が居た位置残るのだ。その残った弾が非常に邪魔で、青い弾以上に俺の行動を制限してくる。
左に一歩踏み出し赤い弾を避ければ、次には俺の両隣に弾が。
避けれない!
にへ、と笑うリリカを見た。
赤い弾が放たれた。
「まっだまだぁ!」
大声を上げ自分に渇を入れる。
大声に驚いたのか、びくりと身体を震わせたリリカを尻目に、先ず迫りくる赤い弾幕を半身になり避ける。
そうすれば、ほら。
今まで見えなかったものが見えてくる。
一本の直線に連なる赤い弾幕だが、その一個一個には隙間がある。隙間と言っても、とても潜りぬけられるものではない。
この隙間の中に身を投じるのはまず自殺行為。だが、もう其処にしか逃げ場は無いのだ。
タイミングなんて計る暇なんて無い。
ただその隙間に向かい跳び込んだ。
ぢり、と着物を弾幕が掠り少しだけ破り去る。肌には、弾幕が触れたのか、少しだけ熱い感覚が。
それでも、被弾した証拠である小さな爆発は起きなかった。
俺は、避けきったのだ。



