東方無風伝 4
結局、リリカの弾幕は俺に消され、決着はつかず。
リリカと二人で、傍観していた西行寺達の元へと歩いて行く。その間リリカは不服そうな顔をしていた。
「能力開花、おめでとう、風間」
「有難う、西行寺」
拍手しながら言う西行寺。彼女の称賛の言葉は、相変わらず気持ちが籠っていないが、素直に褒め言葉として受け取ろう。
「あれが、貴方の能力かしら?」
「ああ、そうだよ」
あの桜の花弁を操った現象。それが俺の能力。
「花弁を操る程度の能力、ですか?」
「違うわよ姉さん。もっと別」
ルナサの推測の能力名を、実際に体感したリリカは否定する。
「幻想郷では、能力名の後に『程度の能力』とつけるのだな。それならば、俺の能力は」
「風を操る程度の能力、ね」
俺の言葉を遮って能力名を言うリリカ。
少しむっとしてリリカを見れば、してやったりと言う顔のリリカ。
ぬぅ、仕返しのつもりかこやつめ。
「じゃあ、風間は風を通じて花弁を操り、リリカの弾幕を消したと。そう言うことでいいのかな?」
「その通りだ、メルラン」
「言っちゃえば、貧弱な能力だけどねー」
生意気なことを言うのは、リリカだ。と言うか彼女しかいない。
「リリカ、俺に恨みでも?」
「頭ぐりぐり。弾幕ごっこで恥じかかされた」
「あー、はいはい」
どれも自業自得だと思うが……。
「時にリリカ」
「ん?」
「俺の能力が貧弱と言ったか」
「貧弱じゃない。ただ風を操るだけでしょう?」
その通り、確かに俺の能力は風を操るだけに過ぎない。
「風を侮るな」
言った途端、突如として吹き荒れる風。
「きゃあ!」
突然現れた突風は、一瞬にしてリリカの帽子を奪い去り、尚もリリカ自身を攫(さら)おうとする。
リリカは小柄な少女だ。直ぐに攫うことくらいは出来る。
「ストップストップストップ!」
リリカのその声に反応するように、風は急に止む。
「解ったか?」
「解ったから帽子返してよ!」
噛み付くように言うリリカ。
はいはい、と半ば適当な返事で、風を操り飛ばされた帽子を回収する。
ほれ、と帽子を手渡そうとすれば、引っ手繰る様に奪い取るリリカ。
いやはや、やっぱり嫌われたなぁと少し反省しつつも、やっぱり反抗的なリリカの様子を楽しんでいる自分がいる。
何処も反省していないことに、反省。



