東方無風伝 4
「かーねー!」
「どうどうどう」
妖夢に羽交い絞めにされてなお、そう叫ぶ霊夢。
何と言うお金への執着心……。流石は霊夢と言うべきか、恐るべき。その執着心はどこからか恐怖心を運び出し、冷や汗を背中が伝う。
「落ち着け霊夢。そのうち利息を付けて返そう。それなら、今返されるよりも得と言うものだろう」
「本当!?」
「……ワタシ、ウソ、イワナイ」
霊夢を落ち着かせる為に、ついそんなことを言ってしまった。
その霊夢は、まるで犬が尻尾を振る様な、そんな嬉しさを滲みだしている。いや、滲むと言うか、開放していると言った方が良いくらいだ。
「絶対よ! 利息は十一よ、良いわね!」
「いやそれ高い」
お金に喚く霊夢に、それを抑えようとする妖夢。それを見て笑う魔理沙
そこに平和を感じずに何とする。
「なに笑ってんのよ」
「いや、何も」
顔に出してしまっていたようで、それを霊夢が不機嫌そうに指摘する。どうしても利息を高く設定したいようだが、それをさせるわけにはいかない。
『あくまで』、二人が納得する金利にさせた。霊夢は不服そうだが。
「しかし、妖夢が助けを無視するなんて、珍しいことがあるもんだな」 魔理沙が妖夢に言う。
それは俺も気になっていたことだ。あの真面目な妖夢が困っている人間を見捨てるとは到底思えない。だが、それは現実にあった出来事。
「何時ものことですから」
……その言葉だけで納得する自分がいた。
魔理沙もなんだか納得した表情だった。
「慣れとは怖いものだな」
「全くだぜ」
二人して、肩を竦め笑う。
「そんなことより!」
霊夢が突然叫ぶように言う。
「どうして此処は暖かいのよ!」
「春だからだろ?」
「春だからだぜ」
「春ですから」
「なんでよ!」
「だって、なぁ」
春。霊夢は白玉楼が春であることを疑問に思っているのだ。
まぁそれは尤も疑問だ。俺だって初めはそう思ったのだから。
「あんたら、また春を奪ったの」
お札を構え、妖夢に向けて言う霊夢。
その眼には強い敵意が込められている。



