東方無風伝 4
「ふと思ったのですが」
「ん?」
とんとん、リズムよくまな板を叩く包丁。それに合わせて野菜が刻まれていく。
台所にて、妖夢と一緒に宴会の準備をしていた。普段の妖夢なら、一応は客人である俺にそんなことはさせないが、今は半ば強引に手伝っている。と言っても、説得してみたらあっさりと妖夢は折れた。今日はとても忙しい一日となる。少しの甘えが出たんだろう。其処がた、妖夢のしっかりとした反面の、見た目相応の幼さを出していた。
「風間さんって、料理も出来たんですね」
「出来なければ、手伝おうなんて言わないさ」
「それもそうですね」
「それに、俺は料理以外にもなんだって出来るぞ」
「風間さんってそんな感じがしますね」
「どんな感じだよ」
あはははと笑い合いながらも、二人の作業する手は止まらない。
「二人で仲良く、何を話しているのかしら?」
現れたのは西行寺。摘み食いでもしに来たのか?
「西行寺。摘み食いをするのなら他所行ってくれ」
「冷たいわね。楽しそうだから、混ぜて貰おうと思っただけよ」
ぷんすかぷんのぷんぷんぷん。今の西行寺の様子を擬音で表せばこのような感じだろう。
「霊夢達は良いのか?」
「ええ。今頃、あの三姉妹と遊んでいるわよ」
「なんだ、残念」
「何がよ」
西行寺の言葉は霊夢に信用されず、ずっと霊夢に吠えられているのかと思ったが、そうでもなかったようだ。
別に退治されれば良かったのにとか思っていませんとも、ええ本当に。
「美味しいわね、この御浸し」「それはどうも。そして喰うなと言っておろうに」「あら、この叩きも美味しいわね」「おどりゃー喰うなと言っておろうがー」「きゃー、私が風間に食べられるー」「ぐへへ、美味そうな女子(おなご)じゃあ」「助けて妖夢―、変態に食べられるー」「あ、違う。これはただの年増だ」「なんですって!?」「と言う訳で、妖夢をぱくぱく」「みょん!?」
と妖夢を後ろから抱き締める。危ないから、包丁を取り上げてから。
「私が年増ですって? 妖夢、私と代わりなさい。命令よ」
「みょーん」
「妖夢は嫌だと言ってるぞ」
「貴方に抱かれるのがね。さぁ、私を美『少』女と認めて抱きしめなさい」
「妖夢以外の『美少』女が見当たらないぞー?」
「きー!」
んなことをやっているうちに時間は経って、宴会の時間はやってくる。料理は全力で作って忙しさ倍増しましたとさ。



