東方無風伝 4
「おら風間も呑めー」
「呑めー」
魔理沙とリリカが無理矢理に酒を進めてくる。
宴会は始まり荒れた部屋。あれだけ用意した料理の殆どはなくなり、後は酒を呑んで皆騒ぐだけである。
魔理沙とリリカの進める酒を一気に煽る。
「よし、次!」
「次―!」
「いい加減にせい」
俺が呑んだのを確認すると、魔理沙とリリカは次の酒を持ってくる。
先程からずっとこの調子だ。
魔理沙とリリカの顔は、茹でられた蟹のように真っ赤。近づけば酒の匂い。この二人は、とうの昔に酔っ払っているのだ。
酒を呑むのは構わない。なにより楽しいことだ。だが、酔っ払う程には呑みたくはないな。
酒は呑んでも呑まれるな。これは酒を嗜む時の鉄則だ。
だが、二人はそれにお構いなしと言わんばかりに酒を呑み、酒を進めてくる。
絡み酒程厄介なモノはないな本当に。
「モテモテねぇ」
「からかうな。助けろ」
「有料よ」
「前言撤回」
霊夢に助けを求めるが、請うだけ無駄だった。
霊夢はこんなやつだとい、そろそろ俺も学習しようか。
「妖夢ー、は寝ているのか」
「ええ。この程度で潰れるなんて、主として恥ずかしいわ」
眠る妖夢の髪を撫でながら言う西行寺。こうして見ていると、本当に親子のようだ。
ふと他の連中はどうなっているのかと思い回りを見渡せば、ルナサ、メルラン、霊夢の三人は静かに酒を嗜み、妖夢と橙は酔い潰れたのか、眠ってしまっている。藍は西行寺と同じように橙の頭を膝に乗せ、頭を撫でている。
酒を静かに呑む三人と、眠った二人と、母親のような行動を取る二人と、酒に酔う二人と、絡まれる一人。
今この宴会場を支配しているのは、実質二人だった。無論、その二人とは酔っ払った者達のこと。
「ほれ風間口を開けろ。私達が呑ませてやるぜ」
「魔理沙、口を開けろ」
「んあ?」
「ほれ」
間抜けに口を開けた魔理沙に、酒瓶を突っ込む。まだ大量に酒が入っている瓶だ。
酒は重力に従い魔理沙の口内を支配し溢れていく。その過度のアルコール摂取により、漸く魔理沙は潰れる。
「まず一人」
「ひうっ!」
俺の呟きに、リリカが小さな悲鳴を上げる。



