東方無風伝 4
「ちょいと其処の」
「あ?」
背後から裾を引っ張られながら呼び掛けられ、情けない返事と共に振り替える。
其処には赤い少女、リリカが其処にいた。
「なんだ、何か用か?」
「宴会始まるまで、どうせ暇でしょ?」と決めつけた口調で言われる。
「いや、剣術の修行が有るから、暇ではないな」
西行寺に話し掛けられ中断した素振りをまた行っておきたいし、その他にも色々と鍛錬を積んでおきたいと思っているところだ。
「いいから、付き合いなさい」
「……はい」
胸倉を掴まれ、凄みのある声で脅迫されては敵わない。
「弾幕ごっこ。知ってるよね」
「知ってはいるが」
以前、霊夢達が行っていたのを記憶の奥底から引きずりだす。
確か色とりどり形とりどりの、弾幕と表した弾を撃ち合う遊び、だったか。
「やるわよ」
「無理」
弾幕なぞ、見たことが有るのはあの一回切り。いや、この白玉楼を訪れる途中、魔理沙とルーミアとやらの弾幕ごっこに巻き込まれたか。
だが、実際には俺は弾幕ごっこをやったことは無い。何より、俺は弾幕を出すことなぞ出来やしない。
だからこそ、自分の身を守る為に剣術の修行を行っているのだ。
「無理じゃない。やるの」
先程から妙に苛立っているような印象をリリカから感じる。
一体何に苛立っていると言うんだ。
「リリカ、先程から君は何を苛ついていると言うんだ」
「ど、の、く、ち、がそれを言うかー!」
胸ぐらを掴んだ両手を振るい、俺の身体を大きく揺さぶる。視界がぐらつき、最早何の景色も視界には入ってこない。
取り敢えず、リリカを宥める為に声を掛ける。
「落ち着けリリカ!俺が何か悪いことをしたと言うのなら謝ろう!だから落ち着け!」
「謝って済ませるかものか!」
逆効果だったのか、より一層激しく揺さぶられる。
頭が体よりも遅れて動き、お陰で接続部である首がギシギシと悲鳴を上げ始める。
マズイ、首がもげる……!
「西行寺……見てないで助けろ……」
「二人の問題にどうして私が入らないといけないの?」
西行寺のそれは正論だ。だが、困ってる人間を助けようと言う気持ちは西行寺には無いのか!
……無いのだろうな。



