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THW小説⑦ ~ Episode JIN ー別離ー ~

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―JIN side―

これは・・・夢だろうか?
やけに,鮮明だ。
豊かな,緑。
木々の間から,明るい陽射しが零れ落ちている。
その中で,笑いあう仲間達。
「な,碧風?」
私に向かって,笑顔で話しかける人。
アオカ・・・?
私・・・?

その時,フラッシュバックのように,色々な記憶が流れ込んでくる。
暖かい幸せな気持ち・・・
この気持ちは・・・誰のもの・・・?
私の・・・?俺,の・・・?

「・・・ンさん!!ジンさん!!!」

誰・・・?誰を呼んでる・・・?

「ジンさんっ!!」
はっ,と目を開ける。
ベッドの上に,寝かされていた。
「こ・・・こは・・・」
「ジンさん!ようやく気が付かれましたか!」
ジン・・・そう,私の名前だ。
では,あの記憶は一体・・・?
「研究所の事故に,ジンさんが巻き込まれたと本部に連絡が入って。攻特隊メンバーで行ってみたら,研究所は跡形もなく・・・とにかく,ご無事でなによりです!」
そう・・・か。そんな事に・・・
では,あの彼はどうなってしまったのだろう・・・?
「ジンちゃ―――――――――――――ん!」
バァン!!と扉が開かれる。
「あ・・・ザビ隊長。」
「ちょっと大丈夫?災難だったねぇ〜」
ザビ隊長は,心配そうにペタペタとあちこち触る。
その瞬間。
グワン,と不思議な感覚が襲ってきた。

・・・知っている。

「私は」『俺は』
「この人を」『こいつを』

「『ずっと前から知っている・・・!!』」


「・・・あ」
「ん?なに?どったの?」
「・・・いえ,何でもありません。私なら,大丈夫です,隊長。」
「そう?ならいいけど。顔,真っ青だよ?」
「・・・研究所に居た,他の人たちは,どうなったのかな,と思いまして・・・」
「・・・そっか。何かすごい事故だったってね。まだ,生存者確認中だけど,今んとこ・・・」
「・・・そう,ですか・・・」

あの融合が,原因だったのは間違いない。
そして,この記憶。感情。
普通の融合で,ここまで同化することなど,考えられない。
あの彼は・・・もう一人の私は。
どうしてしまっただろうか。

・・・私は,「もう一人の私」を探し出さねば・・・・!!


*******************************************

それからというもの,私は彼を探すために全力をつぎ込んだ。
無事かどうかもわからない。
だが,私の中の『彼』が,『生きている』と言っていた。
「砂塵の能力者で,真紅の瞳の男」・・・
しかし,どこを当たっても,一向にその情報は得られなかった。

やはり,無事ではないのだろうか・・・
そう,あきらめかけた,ある日。

「隊長!!入隊希望者ですよ!!」
背中を押されて,攻特隊に,ぽん,と現れた,一人の男。
「おお!?碧風じゃないか!よく来たな!」
隊長は,昔馴染みのように,バンバンと背中を叩いている。

(・・・!!やっと,見つけた・・・!!)
眼は金色だし,能力は疾風だと言う。
・・・あの情報では,見つからなかったわけだ。
だが,間違いない。
私の中の『彼』が,騒いでいる。
・・・聞いた情報によると,覚醒時に記憶障害が出たということは,本人もわかっているらしい。

「!」
チラ,と視線が彼とかち合う。
だが,彼は,ペコンと頭を下げて,通り過ぎて行ってしまった。

忘れている・・・・?

・・・そうか。
あの凄惨な事故を忘れているのならば,その方がいいのかもしれない。

彼を,一人前にするまで,支える。
それが,私の使命―――――


*********************************************


――――あれから,随分,時が経った。
本当に,色々な出来事があった。
碧風さんも,着々と成長しつつある。
・・・そろそろ,かもしれない。

「ジンさん!!」
相変わらず,私に満面の笑顔を向け,駆け寄ってくる貴方――もう一人の,私。
――そう。でも。
私の役目は,もう,終わり――
「碧風さん。」
「何?ジンさん。」
「・・・お話が,あります。」
「え?何?改まって。」
碧風さんに椅子をすすめ,自分も座る。
「・・・私。攻特隊を抜けます。」
「・・・え?」
まんまるに,見開かれる碧風さんの眼。
予想はしていたが,チクンと胸が痛む。
「ちょ・・・!待ってよ!何で!?」
「・・・もう,私は攻特には必要ないんですよ。」
「そんな・・・!!そんなことない!!俺にはまだ,ジンさんに教えてもらいたいことが山ほど・・・!!」
「貴方はもう,大丈夫。たくさんの仲間が居ますから。」
「・・・そんなのは理由にならない。俺にはジンさんが必要だ!」
「碧風さん。ワガママを言わないでください。・・・私も,やりたい事ができた。これでは,ダメですか?」
「・・・。」
うつむいて,黙り込んでしまう碧風さんを見て,また,チクンと胸が痛む。
「・・・ジンさん。」
「はい。」
「・・・俺。あんま覚えてねぇけど・・・」
ドクン,と私の心臓が鳴る。
「・・・俺,ジンさんと・・・なんか・・・すごい融合,したよね?・・・時々・・・絶対俺のじゃないって記憶が・・・さ・・・」
「碧風さん・・・」
「そうだろ!?そうなんだろ!?最初に俺を助けてくれたの,ジンさんだよな!?ジンさんも,俺の記憶持ってんだろ!?」
バンッ!とテーブルを叩いて,碧風さんが立ち上がる。
「嫌だ・・・!!俺が・・・もう一人の俺が居なくなるのは嫌だ・・・!!」
・・・今にも,泣きそうな顔。
グッ,と流されそうになるのを,こらえる。
「・・・覚えてたんですね。・・・大丈夫,私はいつでも,貴方の側に居ますから・・・」
「・・・じゃあ,何で・・・」
ふてくされた子供のような顔をする碧風さんに苦笑する。
「言ったでしょう?私にもやりたい事がある,と。」
「・・・それは,何?」
「秘密です。・・・でも,必要な時は,私は必ず貴方の側に居ます。これは,約束します。」
「・・・約束・・・」
「ええ。・・・では,私は,これから隊長に除隊願いを出してきますので。」
「!!!もう,行くのか・・・?」
「はい。・・・これは,決めたことですから。」
「・・・そっか。」
スッと,碧風さんが立つ。
「見送るよ。・・・それぐらい,いいだろ?」
「・・・そうですね。でも,他の方々には,御内密に。深夜ですし・・・静かに,去りたいですから。」
「・・・わかった。」
私はニッコリと微笑み,碧風さんと共に隊長室へと向かった―――――


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