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こらぼでほすと 一撃8

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カが、「わかってるよ。」 と、返事する。

「そういや、今回一番びっくりさせられたのは、ギルさんの好みに、うちの娘さんが入っ

てたことだ。年齢は関係ないんだね? ギルさん。」

 一同、その事件を思い出して、あーとかうーとかあやふやな言葉を吐く。確かに、あれ

は意外な事実だった。ロリショタの変態だとばかり思っていたら、そういうもんでもない

ことが発覚したからだ。

「あれは、シュチュエーション萌えってやつになるのかなあ。レイのママっていうのが、

ツボだったみたいだ。」

「はあ? トダカさん、あの変態、そんなこと言ったのか?」

 自分の所属のトップでも、ハイネは容赦がない。

「てか、トダカさんから、萌えとかいう単語を聞くとは思いませんでしたね。」

 的確なツッコミどころには、八戒がピンポイントだ。

「美人顔だからなあ。年齢を気にしないなら、確かに男に好かれるとは思うぞ。あの憂い

顔はそそるからな。」

「あんたさ、その見解が、すでにヤバイだろ? 」

 痛い台詞の鷹に、今度は悟浄がツッコミだ。いろいろとボケるのが多いので、ツッコミ

役も忙しい。

「うちの娘さん、可愛い性格だとは思うんだけど、亭主持ちだからねー。まあ、三蔵さん

なら、難なく撃退してくれるから大丈夫だろう。」

「撃退どころか眉間に一発マグナムだろうな。それだけは阻止しとけよ? ハイネ。」

「おい、虎さん、なんで俺が、あの変態を助けなきゃならん? いっそ、片付けてもらっ

て、当たり障りのないのに交替してもらったほうがいいんじゃないか? 」

「まあ、まだ利用価値があるし、あれなら、キラが小首傾げて、おねだりすれば、即断即

決してくれるだろ? しばらくは生かしておけ。」

「りょーかい。急所外してくれるように頼んでおく。」

「ハイネ、それなら、悟空に如意棒で、ホームランしてもらえばどうです? 骨折ぐらい

で済みますよ? 」

「八戒、それ、着地点が問題だろ。一応、あの変態、有名人だから、道路に血だらけで転

がってるのはスキャンダラスすぎないか? 」

「゜あーそうですね。それは、まずいか。穏便に、というのは難しいですね。ユニオンの

変態は、悟空が振り回して、ジャングルジムの上に放置したんですけど。」

「あれは、一般人には顔を知られいなかったからよかったんだけどさ。」

 あいつ、降りてきて寺へ行ったら、確実に死ぬな、と、虎は内心で予想した。穏便に、

という言葉が、どこにも当てはまらない対処ばかりだ。

「そういや、ハイネ。その後、ユニオンの変態は、どうしたんだい?」

 ふと思い出して、トダカが尋ねる。刹那のストーカーは、悟空が凹にして、いろいろと

画策してユニオンに送り返しておいた。その後は、みな、忘れていた。

「あれは、病院送りにしたから、まだ入院してると思うぜ。ポニテさんは退院したと思う

。」

「それなら安心だな。」

「また来るかもしんないけどな。あのしつこさは尋常じゃねぇーよ、トダカさん。」

 快気祝いの宴会の割に、話していることは、あまり平穏なものではない。これはしょう

がないと、誰もが内心で思っている。この店にいるスタッフも、それに関わっているのも

、やはり普通ではないからだ。





 この騒がしい宴会とは無縁のほうは、翌日の朝から外出していた。父の日の贈り物第二

段の探索のためだ。今回は、シンとレイが事前に、何点か目星をつけて、ニールにも判断

してもらって決めることにした。

「これ、どう? また、六個のセットだけど、色違いだし、ぐい飲みより大きいしさ。冷

酒を飲むなら、こんな感じかと思うんだ。」

 切子ガラスの六客セット。おそらくは、冷茶用だと思われるが、これでも、トダカには

小さいぐらいのぐい飲みだ。

「いいんじゃないか。 これより大きいのってないんだろ? 」

「いえ、バラ売りならあるんです。」

 こっちです、と、レイが、目星その二へ誘導する。こちらは、拭きガラスの気泡が入っ

たグラスだ。ひとつひとつが微妙に形も柄も違うのが、いくつもあるし、これのほうが、

コップとしての容量も大きい。

「大きさなら、こっちだろうな。でも、色合いはあっちのほうがいいような気がする。」

「だから、迷ったんだ。ここは、ねーさんの決断に頼る。」

「俺かよ? じゃあ、多数決にしよう。色の綺麗なのが、いい人。」

 はーい、と、シンが手を上げる。

「はい、ひとり。じゃあ、容量の大きいのがいい人。」

 はーい、はーい、と、レイとニールが挙手する。

「じゃあ、こっちの気泡のコップ。じゃあ、どれにするか、各人、二個ずつ選ぼう。」

 別に、五個じゃなくてもいいのだ。予備にひとつを買えば、先に贈ったのと同じ数にな

る。うっすらと水色や緑色が入っているコップは、気泡の加減で、柄は、まったく異なる

。しばらく、考えて、ふたつずつ選び出して、贈り物その二は決まった。

「悪いけど、俺は贈呈には立ち会えないと思うから、よろしく頼むな? 」

 第三日曜ともなると、ニールは本宅で寝込んでいる時期だ。さすがに、その時期に、本

宅から出るのは無理だ。

「三人からって言っておく。」

「花につけるメッセージも三人連名にしておきますね。」

「それから、レイ、ギルさんにも贈っておけよ? おまえの保護者なんだからな。日頃の

感謝はしておけ。」

 ちょっと変わった人ではあるが、レイのことは可愛がっている様子だった。それなら、

きっと、レイから花が贈られてくれば、喜ぶだろう、と、ニールは言う。

「ええ、それは手配してあります。」

「シンは? 」

「オーヴだし、命日の時に墓参りする。」

 シンの両親は、オーヴで眠っている。そちらにはいかないのか? と、尋ねたら、この

返事だ。忘れたわけではないし、忘れようとも思わない。ただ、父の日、母の日なんてい

うイベントまで、いちいち、出向こうとは思わないらしい。ニールも、命日前後に墓参り

していたから、その考えはわかる。

「そうか。」

「ああ、それでいいんじゃないかと思うんだ。」

「いいと思うよ。俺も、そうしてた。」

 亡くしてしまったものを悼むのは生きている側だ。一年に一度、そのことを確認すれば

、それでいいと思う。亡くなったほうは、そんなこと考えることもないからだ。

「ねーさんぐらいだぜ? そんなことまで気にしてくれるのは。」

「うるせぇーな、ちょっと気になったんだ。・・・・とりあえず、レジ行くぞ。各人二個

ずつ、レジしてもらって、ラッピングはまとめてもらうからな。」

「ほーい。」

「はい。」

 生きている相手だから、感謝の言葉も贈り物も渡せる。それが、とても幸せなことだと

、気付いているから、シンとレイも用意は怠らない。

・・・・・幸せだけど、ちょっと悲しいよな。・・・・・・

 血の繋がった相手ではない。その相手は、もうないのだ。それが、ちょっとニールには

痛みになる。



 入梅が迫ってきたので、寺の女房は留守にする間の準備を、さくさくとこなしていた。
作品名:こらぼでほすと 一撃8 作家名:篠義