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こらぼでほすと 一撃8

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「浮き輪買ってやるよ。それで、桃色子猫と泳いでやれ。」

「・・・あはははは・・・・浮き輪かー。それなら、なんとかなるかなあ。うちは寒冷地

だから、そういう遊びはしたことがなくて。」

「黒子猫もか? 」

「刹那は、組織でトレーニングメニューに組み込んで習得させました。あいつも、海のな

いとこの人間で・・・・元気かなあ。」

「まだ三ヶ月も経ってないだろ? なんかあったら、キラたちが騒ぐ。騒いでないのは、

元気な証拠だ。」

 黒子猫が出てから、まだ二ヶ月とちょっとだ。今回も半年の予定だから、次は秋に戻っ

てくるだろう。今までは、始終、顔を合わせていたから、どうも居ないと気になる。ただ

の観光旅行なら気にならないが、刹那が放浪しているのは、世界の歪みを確認するためだ

。危険も含まれる。

「刹那は、あんまり痛いとか言わないんで・・・・もうちょっと言いたいことを吐き出せ

ばいいと思うんですが・・・・あれ、なんとかなりませんか? 」

「おまえ、俺に黒子猫の教育を押し付けるつもりか? あんなひねくれもんは、おまえに

しか扱えんぞ? 俺に回すな。」

「いや、案外、あんたの言うことは聞くでしょ? 」

「おまえの亭主だから、だろ? 」

「そうなんですか。へぇー刹那でも、そういうことは気遣いするんですね。成長したなあ

。」

「成長ぐらいすんだろ? あれぐらいの時は、呑み込んで消化すんのも早ぇーからな。」

 ニールは、けほっと咳をして、傍に置かれているペットボトルから、お茶を飲む。いろ

いろな経験を積んで、成長させてマイスター組リーダーをさせようと考えたのはニール自

身だ。少しずつ、いろんなことを吸収して成長していく刹那を見守るのは楽しくて寂しい

作業だ、と、思う。

「俺、子離れできるかな。」

「無理だろうな。そのうち、うざがられるに違いない。」

「はははは・・・・確かに。・・・ちょっと寝ます。」

「おう。」

 タバコをもみ消して障子を閉めると、向こうの脇部屋に三蔵は移動した。そこには、大

の字で、ぐーぐーと寝ているハイネがいる。そちらには、問答無用で蹴りを見舞って叩き

起こした。

「ママがダウンだ。さっさと起きて運べ、間男。」

 啖呵を切ると、スタスタと家のほうへ引き返した。




 今年は、最初の雨量は大したことはない。後半に、集中して雨が降るという予測なのだ

が、やっぱり、ニールはぐったりで本宅で寝込んでいる。まあ、いつもよりは楽という程

度で、動きは鈍い。

 ハイネに本宅のいつもの部屋に叩き込まれたので、大人しく横になっている。動けない

ことはないが、動くと頭痛がするからだ。ドクターも看護師も慣れたもので、そのニール

の看護はしてくれる。

「あら、意外とお元気そうですね? 」

 叩き込まれた初日の夜に、歌姫様が顔を出した。ここのところ、バタバタと遠征してい

たので、顔を合わせていなかった。

「そうだな。熱もないし、いつもより楽だよ。」

「ティエリアが、まもなく降下してまいりますわ。連絡が入りました。」

 キラから歌姫に紫子猫降下の連絡が入った。キラは、ラボに詰めているので、本宅に戻

っている歌姫から伝えて欲しい、とのことだった。

「律儀に来やがるな? 」

「それは、ママのことが心配だからです。・・・・・申し訳ありません、まだ、治療法が

みつかりませんのは、私とカガリの努力不足です。」

「開発もされてないもんは無理だろ? 別に、大したことじゃない。」

 目下、必死に調査しているが、負のGN粒子の影響を相殺できるような治療は開発され

ていない。現状を維持するのが辛うじて、と、いった具合で、ニールも、そのためのクス

リは服用している。

「ママは、私のことを甘やかしすぎですよ? 」

「甘やかしてない。おまえさんが、無茶なことをするほうが心配だ。俺のことはいいから

、自分の仕事のほうに専念しろ。」

 宇宙規模に有名な歌姫様は、毎日、何かしらの予定がある。それをこなすだけでも大変

なのに、些細なことまで気を回すな、と、ニールは叱る。どうあがこうと、こればかりは

、どうしょうもないのだとニールもわかっている。それで謝られても、こちらも申し訳な

い気分にしかならない。

 これは話題にしてはまずかった、と、歌姫も思い直して話を変える。以前から、一度、

やってみたかったことがある。隣同士まではやったので、同じところというのに挑戦だ。

「では、お願いがございます。」

「なんだ? 」

「今日は具合がよろしいのなら、是非、私くしの部屋で寝てくださいませ。」

「はあ? 」

「ママに添い寝していただけたら、ぐっすり眠れて、明日も元気に働けそうな気がします

の? 」

 小首傾げてニッコリと歌姫様が微笑む。普通なら、「喜んで。」 と、即答されるだろ

うが、常識派庶民のおかんは、怪訝な顔をするだけだ。

「そういうのはダメだと言わなかったか? ラクス。」

「別にストレス解消の運動をしようとお誘いしているわけではありませんから、よろしい

んじゃありませんの? 同じ部屋で眠るのと、大した差はありません。」

「そうじゃねぇーよ。俺は、おまえのおかんはしてるけど、男だろ? 誤解されたら、ど

ーすんだよっっ。」

「たぶん、誰も誤解いたしませんよ? 」

 ここにいるニールの容態は、みなが知っていることだ。この状態で、何事かできるとは

到底、思えないし、やる気もないだろうと思われている。当人も、そんな気は、さらさら

ない。というか、はっきり言って、できません、勘弁してください、だ。

「でもな、ラクス。」

「こういう時は、ひとりはよくありません。ティエリアが降りてきたら、その役は譲りま

すが、それまでは、私が添い寝してもらってもいいのではないでしょうか? 」

「クスリで寝るから、話も出来ないんだぞ?」

「有体に申し上げて、傍に体温が欲しいだけですから、寝ててくださって構いません。」

 ラクスにとって、ニールはおかんだから、男性とは看做されない。ラクスの部屋でフェ

ルトや刹那を交えて寝ていたこともあるのだし、寺ではとなりの布団というのもあるのだ

から、今更、そう、倫理がとうとかいう問題はないのだ。

「おまえな・・・少しは慎みってものをだな。」

「キラとあなた以外にはする気は起こりません。ママ、たまには添い寝してくださいな?

 」

「・・・わかったよ・・・」

 歌姫様が、こういう我侭を言うのは、疲れている時だ。また、いろいろと溜め込んだん

だろうな、と、ニールも、その顔を眺めて苦笑する。天下の歌姫様は、常に一人で外へ出

ている。キラが背後に構えているといっても、矢面に立つのはラクスの役目だ。それほど

有名で発言に力がある。だが、当人は、まだ若くて、心の壁だって薄い部分もあるから、

どこかで心が疲弊する。それを吐き出せる相手は少ない。



 看護師に歌姫の寝室まで車椅子で移動させてもらった。寝る前のクスリは、飲まずにサ
作品名:こらぼでほすと 一撃8 作家名:篠義