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鉄の棺 石の骸番外11~類は友を呼ぶ~

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 2.

――その街では、年に一度の大会が始まろうとしていた。
 この時期になると毎年行われる、D-ホイーラーの祭典。この大会に参加する為に、世界各地から有名無名のD-ホイーラーが大勢、それぞれにチームを組んでこの街にやって来る。普段はテレビや雑誌ごしでのみ見かける名高い決闘者が、この時期限定で当然のように街を闊歩しているのが、街の住人や観光客にしばしば目撃される。
 街中では、数か月前から大会のポスターが、あちらこちらに何枚も貼り出されていた。貼り出されたポスターに決闘者が群がる様子も、そこここで見られる。どこよりも決闘が盛んなこの街には、大会優勝を夢見る決闘者は数多い。人々の注目を多く集めるのはもちろん有名なチームだが、無名のチームの存在も無視できない。例えば、初めて公式大会に顔を出した無名のチームが、史上最難関の召喚条件の付いたモンスターの召喚に、公式戦で初めて成功した偉業は、決闘史に今でもしっかり記録されている。
 
 
 大規模な決闘大会が開催されると、デュエル・アカデミアはにわかに活気づく。大会期間中は、大会スケジュールが他の全ての授業より優先される。決闘者養成学校としては、近場で実地学習できるまたとないチャンスだからだ。
 生徒も教師も、これから行われるであろう白熱した決闘を待ち望んでいる。何しろ、彼らのほとんど全てが、日常生活にカードが当然のように溶け込んでいるような人間なのだ。
 デュエル・アカデミアの正門前。授業中は遠くから時折声が聞こえてくる程度の静けさも、終業のチャイムを境に、打って変わって騒がしくなる。赤や青色の制服の子どもたちが、雪崩の如く鉄の門戸を潜り抜けていく。
 下校中の一団、青い制服の三人組の中に、少年はいた。背中に背負った学生鞄とデュエルボードのバッグが、少年の赤い三つ編みと一緒に左右にゆさゆさ揺れている。
 三人の話題は、明日からの大会のことだったり、授業での出来事だったり色々だった。三人の内の一人、大柄な体格の少年が他二人に誘いをかける。
「なあ、今日お前ら暇?」
「うん、今日は何もないよ」
「ああ。明日からは暇じゃないけどな」
 眼鏡の少年と三つ編みの少年の答えに、大柄な少年は大層満足そうな様子だった。
「なら、ちょうどいい。俺、デュエルボードの新技考えたんだ」
 背中のデュエルボードをこれ見よがしにごとんと揺らし、大柄な少年は三つ編みの少年に、びしっとまっすぐに指を向ける。
「――今日こそはお前に目に物見せてやるぞ」
「いーぜ。どっからでもかかって来い」
 三つ編みの少年は、不敵な笑みでそれに応える。彼と大柄な少年の間に、激しい火花が飛び散っているように眼鏡の少年は錯覚した。
「二人とも、がんばってね……」
 この二人の決闘に巻き込まれたら、確実に見届け役になるであろうこちらの身が持たない。眼鏡の少年は手のひらを適当にひらひらと振って、彼らのにらみ合いから適当に逃れようとしたが。
「お前何言ってんの?」
「ちょうどいいからお前も付き合え」
 三つ編みと大柄の視線が、一斉に残り一人の方に向く。逃がさないぞとばかりに両脇から二人の腕が伸ばされるに至って、眼鏡は己の不利を悟った。だが、彼らに言わなければならないことは山ほどある。
「ちょ、ちょっと待って! 僕まだデュエルボードに乗り始めたばっかりだよ!? 君たちみたいにすいすい走れるどころか、立つのだってやっとなのに」
「何だお前、そんなことを心配してたのか?」
 眼鏡の少年の言い分を、大柄な少年は何でもないように受け流す。
「安心しな。デュエルボードの乗り方は、僕が教えるよ。――ただし、バリバリのスパルタ方式だけどね」
 三つ編みの少年はそう言うと、高らかに笑い声をあげた。この年頃の少年らしい、どこにも陰のない朗らかな笑い声だった。

 眼鏡の少年は、結局逃走をあきらめた。彼にしても、この二人はいい友達なのだ。二人の決闘に付き合わされてくたくたになるくらい、どうということはない。……ないはずだ、きっと。
 午後の予定も決定し、少年たちの話題は大会のことに戻る。
「ところでさー、お前ら、どのチーム応援するんだ?」
「もちろん、チーム・デルタ!」
「あ、僕も左に同じ」
「何だ、お前らもかよ」
「だって、あのチームとっても強いじゃん」
「チーム・デルタのD-ホイールって、どれもすごくかっこいいよね。デルタ・イーグルなんてもう最高」