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君に届け!

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そういう意味じゃなかったんだけどな…、と遠ざかりそうになる意識をたぐりよせて、正臣は盛大に溜め息を吐いた。
酔ってもないのにえっちして、それも平和島静雄が相手で、なのにいまさら「好きなのかな?」とかほざいている親友の鈍さに、涙が出そうになる。もはや『恋愛音痴』というレベルですらない。今時幼稚園ですら『○○ちゃんすきー』と言えるというのに、どうして自分の気持ちもわからないんだろうか、こいつは。
「……………まぁいい。すること自体に抵抗はなかったんだろ? つまりお前は静雄さんが好きなんだ。そこまではいいか?」
「え、…っと、…うん…?」
「なんで疑問形!? お前は静雄さんが好きなの! えっち出来るくらい好きなの!!」
「ちょ、正臣声大きい!!」
この期に及んでとんちんかんな親友に、脱力感を通り越してふつふつと怒りが湧いた。こいつが鈍いから、いつまでたってもわけわかんないから、自分が苦労するんだと八つ当たりめいたことを考える。
「じゃあ、自覚しろ。今すぐ自覚しろ!」
「う、うん…」
胸倉を掴まんばかりの剣幕で言えば、さすがに帝人がしおらしく頷いた。それで少し溜飲がおりて、びし、と鼻先に人差し指を突き付ける。
「自覚したら、とっととコクれ」
「……え?」
「『え』じゃない、とっととコクって、とっととくっつけ!」
「いや、だって、…静雄さんの都合が、」
「ない。そんなものない。いいからコクれ。今日コクれ」
「無茶言わないでよ!」
「無茶じゃない!!」
普段はボケ役に回っている正臣だが、それは帝人の毒舌に合わせているだけで、決して押しが弱い訳ではない。とにかく一度告白してみろとけしかけると、いつもならここらで渋々折れるはずの帝人が力なく首を横に振った。
「だって、……振られたら、もう友達でもいられないってことだよね…」
「……………はぁ!?」
自分の聞いた言葉が理解できなくて、またまた正臣は小さく首をひねった。なんというか、本当にこの天然ぶりには恐れ入る。
一生分の驚愕を使い果たした気がして、正臣はがっくりとその場に沈み込んだ。
「お前、またなに言いだしたんだよ…。そんなことあるわけないだろ」
「…なんでそう言い切れるのさ」
「とにかく、ないったらないの! 絶対上手くいく方に命賭けたっていい!!」
「いや、正臣の命なんか要らないし」
「そこ!? 否定すんの、そこ!?」
容赦ない切り返しによよよと泣き真似をしかけて、いつものペースに戻してはマズいと正臣は作戦を変更することにした。けしかけるより宥めた方が、基本素直な帝人には拒否しにくいはずだ。
床の上にしゃがみ込み、机ひとつ隔てた場所から椅子に座る帝人を見上げる。真剣な顔で覗き込むと、正臣の決意がわかったのだろう、気まずそうに大きな目が伏せられた。
「じゃあ、駆け引きなしで聞く。お前の好きな静雄さんとやらは、ちょっと仲いい友人に勢いだけでほいほい手ぇ出せちゃうような人間なのか?」
「違う。…けど、」
「俺は実際話したことがあるわけじゃないけどさ、お前の話を聞く限りでは誠実そうな人に思えるんだよな。なのに向こうがなにも言いださないってのは、お前の方に原因があるんじゃないのか?」
「……………」
黙り込む帝人に、正臣はやっぱりそうかと頷いた。恐らく、謝るとか責任云々とか言おうとした静雄を、帝人が遮ったのだろう。謝ることイコール間違った行為なのだと、そう認識されるのが嫌で。
昔から帝人はこういうところが面倒くさいと思ってしまうのだが、確かにことがことだけに謝られるのは却ってつらいかもしれないと思い直した。合意の上の行為でも、一方が罪悪感を持っているなら、それはもう合意じゃない。
「で。お前はどうしたいんだ?」
「どうって、」
「勢いであれなんであれ、いったん今の関係を崩しちゃったんだから、もう元通りにはなんないだろ。知らんふりしてそのままズルズルいくのか、コクってケリつけんのか、―――気まずくなって距離置いて、そのまま自然消滅ってのもあるけどな」
「……正臣」
「俺は、お前がしたと思うことを応援する。だから、―――いったいどうしたいんだ?」
告白すれば、十中十上手くいくと、正臣は思っている。帝人がなにに拒絶感を感じ取っているのかは知らないが、端から見れば『勝手にやってろ馬鹿ップル』とさじを遠投したくなるくらい、静雄の好意は駄々漏れだ。
けれど、ここは本人が、帝人自身が静雄に言わなければ意味がない。周りがよってたかってくっつけるのではダメなのだ。
そう言えば、と正臣はふと『あちら』が気になった。帝人もたいがい酷いが、静雄の恋愛観はどうなのだろう、と。
「…一緒にいたいと思うよ。これからもずっと」
「じゃあ、今のままグダグダで行くか? いつか静雄さんに可愛い恋人ができて、お前の居場所がなくなるまで」
きつい言い方をすれば、帝人の顔がつらそうに歪む。けれども、恋愛なんてそんなものだ。自分の気持ちを伝えて、ちゃんとした関係を築く努力をしない限り、好きな人の横に立つ権利は得られない。
「「好きだ」って、「付き合って欲しい」って、ちゃんと伝えてこいよ」
「……うん」
「絶対上手くいく。万一振られるようなことがあったら、俺はもう一生ナンパはしない」
決意を込めて言うと、帝人がまじまじと見つめてきた。そんなに感動してんのかー、と思わずほろりとすると帝人が、うん、と頷いて正臣の手を握る。
「…正臣がそこまで言うんなら、僕、信じて頑張ってみるよ」
「え、ちょ、俺の命よりナンパを信じんの!?」
「もし玉砕したら、慰めてくれるよね?」
「そんで、またスルー!?」
両手で小さく拳を握って、ガッツポーズを作っている帝人は話を聞いているようには見えない。そんな親友の背中を、正臣は励ますように思い切り叩いてやった。
 
 
 
 
作品名:君に届け! 作家名:坊。