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こらぼでほすと 休暇1

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「大きいもんだね。」

「本当に、くっきり白黒別れてる。これが自然にできるってすごいな。」

 暑さによるのか夜行性なのか、パンダはだらりとお昼寝したまま動かないが、実物は、

ただ見ているだけでも楽しい。観察棟には、ベンチもあって、しばらく、そこで寛いで観

察していたが、ずっと、パンダは転がったままだ。

「悟空が凶暴だって言ってたけど、そんな感じじゃないな。」

 悟空の知っている野生のパンダは、凶暴だと言っていたが、こにいるのは、暢気なもの

だ。見ているだけで、人を和ませてくれる優しい生き物にしか見えない。

「そりゃ、野生のパンダはテリトリーがあるだろうから、そこに侵入したら排除にかかる

んじゃないかな。または、子連れなんかだと、母親は子供を護るのに襲ってくるだろうし

。」

 トダカが、野生動物の基本姿勢なんてものを説明すると、ニールも、なるほどと頷く。

どこの種族でも母親は強いんだな、と、笑ってしまう。随分と記憶からは薄れているが、

自分の母親も強かったような気がする。

 ころりとパンダが寝返りを打つ。そのまま傾斜していた地面を一回転して、そのまま潰

れている。

「癒されますね。」

「こういうのもいいもんだ。」

 潰れたパンダは寝返りを打ち、もにもにと顔を掻いている。その姿に、アレルヤが重な

った。普段は、のほほんとしているし、ちょっとボケたこともする。ハレルヤに変われば

、いきなり凶暴にもなるし、似ているといえば似ているかもしれない。この話をティエリ

アにしてやったら、どういう反応を示すんだろうとおかしくなる。

「さて、娘さんや、他に見たいものは?」

 しばらく、ぼんやりしていたが、トダカはようやく動く気になった。クーラーのある観

察棟があるところはいいが、外気温の中に、あんまり長居ができないニールの希望だけ見

てみようと思ったのだが、ニールのほうも、これといって見たいものは思い浮かばない。

「何がいるんですか? 」

「パンフレットをもらってくればよかったな。ゾウやキリンなんかはいると思うが。」

 園内の案内図を貰っていないから、どこに何がいるのか、さっぱりだ。動物と言われて

も、どちらもピンと来ない。

「案内図を貰って、出直すとしよう。」

「エントランスに置いてるのかな。」

 うーん、と、伸びをして、二人して立ち上がった。有に小一時間は観察していた。これ

はこれで、いい暇つぶしにはなったので、案内図を貰って、動物園は後にした。少し日用

品の買い物をして、お茶をしてマンションに戻れば、トダカの出勤時間だ。

「私が帰るまで、横になってなさい。いいね? ニール。」

「はいはい、言われなくても昼寝しますよ、俺も。」

 さすがに、久しぶりの外出でニールも、ちよっと疲れた。トダカが帰ってくるまで、横

になっていようと、当人も思っている。買い出した日用品の整理をして、動物園のパンフ

レットをソファに転がって眺めていた。そこそこ大きな動物園であるらしく、いろんな種

類の動物が居るらしい。地域別の展示をしているので、エリアによって地域が分けられて

いる。

・・・・・ふれあい広場か・・・こういうの、いいかもしれないな。・・・・・・

 そこは、小動物に触れられるらしい。見たことも触れたこともないだろうから、こうい

うのはいいだろうと、ティエリアと出かけるコースをシュミレートして、途中で、くぅー

と眠りに誘われてしまった。





 キラたちは、『吉祥富貴』のホストの仕事もしているので、夜には一端、特区のほうへ

引き上げる。ティエリアは、そのまま居残って作業を続けている。ヴェーダを一部掌握す

るために必要なシステムを作り上げないと、そこから先に進めないので、ティエリアは踏

ん張っている。これが終われば、親猫とのんびり休暇を楽しめる。それだけが楽しみだ。

組織に居た時から、親猫は愛想のいい陽気な人だった。ティエリアには、それしかわから

なかったが、後々に、ハレルヤが、「外面がいいだけだ。」 と、言っていた。その意味

を知ったのは、私怨に走った瞬間になってからだ。それまで、そつなくマイスター組リー

ダーとして、自分たちを纏めてミッションを展開していた人が、突如として、個人的恨み

のある男に作戦を放棄して挑んだ。ティエリアたちは、そのことを後からデュナメスに残

された記録で知ったが、それを見て、普段の親猫とはまったく違う顔を見せられた気がし

た。その記録がなければ、今でもティエリアは気付かなかっただろう。刹那との対決のシ

ーンで、全ては解決したと思い込んでいたのだ。

「こんなところにいるのは、どっかがおかしい人間だ。まともなわけがない。」

 ハレルヤは映像を見て吐き捨てるように行った。

「僕ら、ちっとも、ロックオンの悲しみなんて気付かなかった。人間の奥は深いんだね。



 アレルヤは、溜息を吐き出した。

 ティエリアには、その悲しみや恨みなんてものは理解できなかった。近しい人間が亡く

なることを知らなかったからだ。今は、少しわかる。近しい人間が長期間行方不明だし、

ロックオンを葬ろうとした人間がいたからだ。もし、アレハレルヤが理不尽に殺されたら

、ティエリアだって、相手を恨むだろう。

 あんなことがあったわりに、ロックオンは、ちっとも変わらずに、自分たちの世話を焼

いている。再会してから、ずっと、その態度は変わらない。

 アレハレルヤのロストで、体調を崩すくらいに心配してくれたのは、ロックオンの本当

の姿だ。どんなに、自分たちに気持ちを向けてくれているのか、とてもよくわかった。だ

から、ティエリアも、ロックオンだけは護りたい。



 親猫の右目は、ほとんど見えていない。瞳がほとんど動かない。それを見る度に、ティ

エリアの胸はツキンと痛む。あれは、自分を庇って親猫が負傷した傷だ。気にするな、と

、親猫は言うが、気にならないわけがない。それが元で、親猫は死にかけたのだし、マイ

スターから外れることにもなった。それを治す方法は、現在、歌姫たちが探してくれてい

るが、まだみつからない。

 もしかしたら、ヴェーダには、それがあるのかもしれない。そんなことも、この作業に

力を入れている理由だ。

「ティェニャン、一度、戻らないか? ママニャン、そろそろ寺へ帰るぞ。」

 作業しているところへ、ハイネが顔を出した。お里で四日ほど静養していたのだが、そ

ろそろ寺へ戻るという話だ。寺の留守番があるし、坊主たちの送り出しの準備もしなけれ

ばならないから、いつもより里帰りは短かった。

「俺は、これを仕上げてから戻る。ろっ、ニールにも、そう言ってある。」

「けど、せっかく降りてきてるんだから、顔ぐらい見せてやれ。せつニャンなんか、毎日

、寺からラボへ出勤してたぞ? 」

「それでは、時間がかかりすぎるだろう、ハイネ。」

「慌てなくても、その作業が済むまでは、滞在を引き延ばす口実になるだろ? そこいら

を、うまく考えろ。」
作品名:こらぼでほすと 休暇1 作家名:篠義