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竜の子

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 髪を拭いて貰った竜の子はひとつ首を振るとこちらへやってきて服の裾を掴む。その方に視線をやる。ふむ。見て変わったところと言えば……背の高さ位だろうか。頭一つ分伸びた気がする。他に変わったところは見受けられない。……少しずつ成長していくのだろうか。あと何回か同じことが繰り返されるのならばいっそ寒くないような部屋のつくりにすべきだろうか。
 関係ないことを悶々と考えていると裾を引く力が強まる。抱っこしてほしいとの合図なのはここ数ヶ月で理解したこと。笑い抱き上げてやると目線が少し変わっていた。いつもと同じ位置だと己が竜の子を見上げる形になるのだ。
 どうかしたかと問うと怖いと抱きついてくる。何が怖いのかと問えばわからないけど眠っている間ずっとお腹の辺りがおかしかったと言う。痛いのではない。痒いのでもない。ただ何か得体がしれないから恐怖しているのだろうとその語彙の少ない言葉から結論付ける。今日は寝るまで側についてやるからと背中を叩きあやしながら言うと、うんという小さな声が耳に届いた。
 
 夕餉を取って暫くもたたないうちに船を漕ぎ始めた竜の子を寝かせ付ける。最初はむずがっていたが睡魔には勝てなかったのだろう直ぐにすやすやと寝息を立て始める。肩肘で頭を支えつつ同じように横になりながらその様子を眺める。もう暫くしたら離れても大丈夫だろう。
 視線の先には障子があり薄く射し込む月光の届く部分が明るく照らされる。先ほど見た位置より光が伸びている気がする。その様子をぼうっと眺めていたら何時の間にか意識を飛ばしていたらしい。

作品名:竜の子 作家名:わさびもち