こらぼでほすと 休暇2
アに、声は聞かせて欲しい、と、出かける時に頼んでいた。過保護とか親バカとか言われ
ても、親猫は親猫だ。
「それから、ラクスのところから応援が入るんだけど、そっちは無視していいから。あっ
ちはあっちで、攻撃して掻きまわしてくれるんだって。」
歌姫様のスタッフにも、電脳関係に優秀なものがいる。今回のキラの作戦に対しても、
陽動をさせる、と、歌姫様から連絡が入った。だから、それが現れても慌てずに無視して
ね? と、キラが付け足してミーティングは終わりだ。天下無敵の大明神様にしてみれば
、緊張するほどのことではない。もし、生体端末に察知されても、こちらの正体は掴めな
い細工はしてあるし、仮想空間を繋げてしまえば、生体端末は、そこを異空間とは認識し
ないような細工もしてある。広げる段階で、チャチャさえ入らなければ楽勝の作戦だ。
「ブランチして、とりあえず、みんなでお昼寝しよう。アスラン、僕、冷たいスープスパ
が食べたい。」
「用意して貰ってるよ、キラ。みんな、とりあえず、別荘で食事して仮眠だ。解散。」
アスランの仕切りで、打ち合わせは終わる。ちろりと、ティエリアは時計を確認した。
まだ、お昼前だ。親猫は動いているだろう。午後からは昼寝が入るから、連絡するなら、
今だ、と、携帯端末で連絡をする。
「俺だ。」
『おう、ティエリア。』
「元気だ。これから食事する。」
『うん、わかった。好き嫌いせずに食えよ? 』
「あなたも食事してください。」
『はいはい。わかってるよー。』
「それだけだ。次は、明日になる。」
『ああ、がんばれ。』
ただ、それだけで端末は切る。この仕事さえ終わったら、ニールとデートだ、と、気合
を入れてキラたちの後を追いかけた。
がらんとした居間で、ティエリアからの連絡を受けたニールは、携帯端末を閉じると卓
袱台に置いた。食事してください、と、紫子猫に注意されたが、どうも、ひとりだと面倒
になる。悟空が食べ残した柿の種が、ちょうど卓袱台にあるので、それとお茶で食事の代
わりにした。昼間は、ひとりになることもあるが、今日から三日間、一人と考えると、な
んだか寂しい気分になる。
・・・・・いやいや、三日ぐらいで寂しいって、俺も病んでるな・・・・・・
苦笑して、立ち上がると、とりあえず家事を片付けることにした。とはいうものの軽く
家のほうを掃除してしまうと、やることがない。洗濯を取り込むには、まだ早いし、おや
つを作る必要もない。とりあえず、読書でもするか、と、居間に本を片手に転がった。
梅雨明けして家に帰ると、居間にもエアコンが設置されていた。そして、客間と脇部屋
のものも新調されていたのには驚いた。ママが夏の暑さで弱るから、設置させてください
、と、歌姫が頼んだところ、亭主が勝手にしろ、と、許可したらしい。お陰で大容量のエ
アコンで、すぐに涼しくなる。
ひとりだと勿体無いが、さすがに、この暑さは耐えられないから、居間のエアコンだけ
入れた。そよそよと涼しい風が吹いてくるので、このまま昼寝しちまうか、と、目を閉じ
た。
トダカが、寺へ顔を出すと、ニールは居間に転がっていた。昼寝時間だったか、と、苦
笑して台所へ足を向ける。綺麗に片付けられていて、使った形跡がない。居間の卓袱台の
上には湯飲みがひとつ、と、柿の種の空の袋があるだけだ。
ま、そんなことだろうよ、と、トダカは苦笑して、冷蔵庫から麦茶を取り出す。どうせ
、ひとりだからと、そこいらのお菓子でも摘んで腹を満たしたに違いない。トダカも面倒
な時は、それで済ましたりする。だが、ニールに関しては、それではまずい。食事だけは
きちんと摂るようにさせないと、即夏バテに直結だからだ。今夜と明日はいいのだが、月
曜日からは、どうしたもんかな、と、考えながら居間のほうへ戻って座り込んだ。
そこへ廊下に足音がして、ひょっこりとアイシャが顔を出した。転がっているニールを
確認して、口元に人差し指を当てて微笑む。トダカと同じように、勝手に冷蔵庫からアイ
スティーを取り出して、トダカの横に座る。コンニチハ、と、挨拶して、アイシャも飲み
物を口にする。
「ニールのお守りかい? アイシャさん。」
「ええ、アンディーからタノマれたの。しばらく、お昼はニールに食べさせてもらうワ。
」
虎も、そこのところは考えたらしい。昼間、誰もいないというのも危ないので、自分の
女房を派遣してくれたらしい。
「それは助かるな。ありがとう。」
トダカもウィークデーに毎日、ここまで顔を出すのは忙しい。夜には、ティエリアとハ
イネが戻るから、それまでの時間繋ぎに誰かいてくれるのは有難い。あまり自覚のないニ
ールが無茶して倒れていても、夜まで気付かれないなんていう事態は、父親としては避け
たいことだ。
「イエイエ、ワタシもニールと過ごすのは楽しいカラ。それに、ティエリアとも会えるカ
ラ。」
黒子猫と桃色子猫とは会えた。今度は、紫子猫だ。単独のところなんて珍しいから、ア
イシャも懐かせる気満々だ。虎はキラたちのミッションのフォローで忙しいから留守がち
だし、アイシャも暇にしていた。だから、こういう頼み事は、アイシャにしても有難いの
だ。
「虎さんもラボか。」
「ええ、そうナノ。」
今回の作業は、かなり大掛かりなものだ。『吉祥富貴』のコーディネーター総出の作業
になっている。さすがに、キラとアスランだけで捌ける作業量ではないし、他の業務もあ
って、総出になっているのだ。それだけヴェーダというシステムは扱いが難しいというこ
となのだろう。
「今日は夜も一緒できるのかい? 」
「泊まろうと思って、荷物は持ってキタワ。」
今夜から月曜まで、ニールは一人の予定だったから、行き来するより泊まってしまうほ
うが楽だと、お泊りセット一式も運んできた。虎も、ニールに関しては、絶大な信頼があ
るらしく、アイシャが泊まりでも疑うこともない。トダカも、そのつもりでお泊りセット
を持ってきた。おかしな組み合わせだが、別に困る相手でもないから、じゃあ、一緒に泊
まろうなんて勝手に決めていたりする。
小一時間して、ニールが目を覚ますと、卓袱台では、のんびりと会話しつつ、もやしの
ヒゲを取っているトダカとアイシャが居た。ふたりして、今日は泊まるのだと言うので、
ニールも呆れた。
「俺は独り寝できないガキじゃないんで、お引取りください。」
「そう邪険にしなくてもいいじゃないか、娘さん。私もアイシャさんも、今日は一人なん
だ。独りばかりで集まって騒ぐのもいいだろ? 」
「ソウヨ、にーる。アンディが忙しくて、アタシもひとりなの。しばらくは、ノンビリし
ましょ。」
ちまちまともやしのヒゲを掃除しつつ、ふたりに反論されると、何も言い返せない。な
んで、そんなことやってんですか? と、話を切り替える。
「もやしのスープを作ろうと思ってね。ヒゲは掃除しておくと滑らかになるんだよ。」
作品名:こらぼでほすと 休暇2 作家名:篠義