こらぼでほすと 休暇3
どうだ? 」
「俺は、かまいません。」
「俺もオッケー。」
「じゃあ、施設の確認とかしとていてくれるか? エアコン効いてる休憩所がベストだが
、なければ、木陰にでも避難させるつもりで考えてくれ。」
施設内部の確認とか、親猫の予定とか、細部のチェックはシンとレイが担当することに
した。それによって乗り物の調達とか、野外での温度対策なんかはハイネの担当だ。
「便利な間男で助かるよ、ハイネ。」
喉が渇いただろうと、トダカが缶ビールを人数分運んでくる。まだ、店の時間で考えれ
ば勤務時間だ。眠くはならない。
「なんせ、亭主がモノグサだからさ、間男がマメになるしかないんだよ。」
「ティエリアがいるから、大丈夫ですよ、トダカさん。」
「まあ、そうだろうね。帰った後のフォローは頼むよ? レイ、シン。」
「てか、ちょうど三蔵さんたちが戻ってくるのと、かち合うんじゃないか? とーさん。
七月末って言ってたろ? 」
「その後、フェルトが降りてくるから、それまでに概略は纏めておけよ? シン。」
「うるせぇー、レイ。自分が、ちょっと先に進んでるからって注意すんな。」
わーわーと騒ぎながら、のんびり飲み会は続いた。風呂に入ってくる、と、言いおいて
ハイネが脇部屋へ様子を見に行ったら、見事に親猫も紫子猫もふとんで沈没していた。エ
アコンの設定をおやすみモードにして、脇部屋の明りも消して退散した。
「俺たち、客間でいいのかな? 布団が三組しかないけど。」
となりの客間を確認してシンが尋ねる。ハイネは、普段から脇部屋のひとつに巣食って
いるから、ここで寝ろ、ということだろう、と、判断する。
「そこでいいと思うよ、シン。きみらのパジャマ代わりに、って、三蔵さんの浴衣を置い
てたから。」
確かに、布団の横には、浴衣が三着分積んである。洗ってノリ付けされたパリッとした
ものだ。トダカも、夜は、これを借りている。軍人様というのは集団生活に慣れているし
、衣服だって、それほどこだわりがない。だから、適当に雑魚寝でも、着替えが坊主の借
り物だろうと、気にしないで寝られる。
「ハイネが戻ったら、一緒に入ろう、レイ。俺、ぼちぼち眠い。」
トダカは、すでに夕方に入ったから、残りは、シンとレイだけだ。ぽてぽてと足音がし
て、ハイネが戻って来た。
「お先。俺、もう寝るわ。」
「お疲れ様。」
ハイネが回廊へ出て脇部屋へと消えると、同時にシンとレイが風呂に向かう。オールセ
ルフサービスな家なので、風呂も勝手にしてもらうことになっている。ただし、ルールら
しいものはあって、最後に入る人間が洗うことに決まっている。それを、いつも仕舞い湯
になっているハイネは知っていたから、先に入って逃げたのだ。
翌日のおやつの時間に、キラは現れた。ちょうど、トダカ家ファミリーが引き上げた後
だったので、寺には親猫と紫子猫とアイシャという珍しい組み合わせの人たちが、バタバ
タとおやつ作りをしていた。
卓袱台で、紫子猫は、不器用に大根オロシをしているのだが、あまり捗々しくない。大
根が大きすぎて掴みづらいらしい。
ぎし・・・ざく・・・ぎぎぎ・・・・
それに、アスランが、うわぁーという顔をした。そのオロシ方だと、おそらくもろもろ
の粒のある大根オロシになっているだろう。
「ティエリア、俺がやろうか? 」
見かねたアスランは、手を差し出したのだが、「問題ない。」 と、素気無く返して、
まだ、ぎりぎりとおかしな音をさせている。
「ママーーただっいーまー」
キラのほうは、お構いなしで、台所に立っている親猫に飛びつく。お湯をぐらぐらと沸
かしているところを見ると、キラのリクエスト通りらしい。
「おおっ、おいっっ、危ねぇーなっっ、キラ。」
「お蕎麦? 」
「ああ、オロシ蕎麦がいいんだろ?・・・・・片はついたのか?」
「もうちょっとだけど、ほぼ終了。」
「お疲れさん。ありがとな。」
五日間ほぼ缶詰で、頑張ってくれたキラの頭を、ニールは、ぐりぐりと撫で回す。えへ
っと笑っているキラを、その背後から、「おかえりー」 と、役得で抱き締めているのが
、アイシャだ。
「ただいまーアイシャさん。」
虎から、寺へ自分の女房を派遣したと聞いていたから、驚かない。それより、鍋で、ぐ
つぐついっている、ここの和風家屋にそぐわない香辛料の匂いがする。
「それ、何? 」
「タレみたいなモノ? 違った味付けを愉しみまショ、キラ。」
あっさりしたのだけじゃ物足りない、と、アイシャが、独自のタレを作っていた。本当
に、それは合うのか、ニールにもわからない代物だ。くんくんと匂いを確認すると、「こ
れもいいかも。」 と、大明神様はおっしゃるので、ニールは、そのタレについては、大
明神様にお任せすることにした。
・
・
普通の山菜オロシ蕎麦と、中東風ピリ辛タレ蕎麦が、卓袱台に用意されると、「ああー
ん、すっごい嬉しい。」 と、キラは中東風から口にした。独特の香辛料の香りがしてい
るが、それはそれでおいしいらしい。ふほーと、おいしい顔をしてキラは箸を進めている
。
「ティエリア、こっちの味見するか? 」
「ああ。」
中東風の少しだけ小皿に乗せて渡してやると、はごっと一口食べて、顔色が青くなった
。やはり、ティエリアには無理らしい。しょうがないから、親猫が、その後を引き受けて
、口にしたら存外美味い。
「意外と蕎麦の味とマッチするんだな? アイシャさん。」
「うふふふふ・・・・そうデショ? これが、基本の味よ?」
刹那の故郷の料理を習うことになっているので、基本ベースを作って味見させてくれた
らしい。確かに、あの魚のシチューも、こんな感じの味だった。
「これ、レシピは? 」
「ワタシの頭のナカね。何度かやれば、わかるでショ?」
「材料だけはメモさせてくれ。」
中東風を食べ終わると真打とばかりに、今度は山菜オロシ蕎麦を、ずるずると啜る。や
はり、夏は、このピリッと辛い大根オロシが気持ち良い。
「うーん、こういう組み合わせもいいですね。俺も材料のメモが欲しいな、アイシャさん
。」
「いいワヨ。」
ニールとアイシャは軽く味見をしただけだ。今夜の晩ご飯は、これになる。食べ終えて
、一息ついたキラとアスランは、温めのほうじ茶で。ほっとした。そこへ、第二陣の登場
だ。レイは、キャリーのついた小さめのトランクを手にして、シンは、スポーツバッグを
手にして現れた。
「シンも泊まるのか? 」
「一応、着替え置いとこうと思ってさ。レイは居候するけど、俺は、たまにってことで。
」
レイは、資料集めが終わっているから、読み込みんで理解するという作業に突入してい
る。だから、資料を読むなら、どこでもいい。シンのほうは、なんとなくテーマは決めた
ものの、まだ資料集めができていないから、大学の図書館に行ったり、担当教授にテーマ
作品名:こらぼでほすと 休暇3 作家名:篠義