なんか帝人受けとかのログをぶち込んだもの
【ヴァンドラッド!/学パロ+吸血鬼パロ/臨帝+青葉】
「いただきます」
パチンと丁寧に手と手を合わせた後、帝人は膝の上に置いていた弁当箱を開いた。
隣に座る臨也は紙パックのジュースにストローを突き刺しながら、げんなりとした顔で帝人の弁当箱から見える食べ物を見つめた。
「俺は今まで色々な人の弁当を見てきたし、女から渡されたりしたけど、レバニラなんか入れてる弁当見たのは君が初めてだよ」
「さり気なくモテ自慢しないでください」
「帝人君、ヤキモチ?」
にやにやと笑う臨也を一瞥し、帝人は「そんなわけないでしょう」と言ってレバニラを口に含む。
口に含んだレバニラを黙々と咀嚼する帝人を見つめながら、臨也は先程開封した紙パックのトマトジュースを飲み込んだ。
透明なストローが赤い液体で満たされ、それを嚥下する度に臨也のでっぱった喉仏が上がったり下がったりする。
何口かトマトジュースを嚥下し、臨也はストローから口を離した。
そのまましばらく無言が続き、臨也の紙パックも空になった。
「帝人君、まだ?」
痺れを切らした臨也が帝人に問いかける。
「ごちそうさま。すみません、お待たせしました」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに、臨也が帝人の上着を脱がせ、ネクタイを解く。
ワイシャツのボタンを何個かあけ、その隙間に手を差し込むと「あっ……つ!」とひきつった声をあげ、臨也がいきなり手をシャツから引き抜いた。
「臨也先輩、大丈夫ですか!?」
何が起きたか分からない帝人が慌てて臨也の手をみると、親指の付け根が赤く焼けていた。
「あーうん、大丈夫」
「先輩、それ、火傷……?」
「苦手なんだよね、それ」少し身を屈めたために帝人の首筋から垂れたそれを指差しながら、臨也が言った。
「へ、え?」
帝人が困惑した声をあげる。
臨也は吸血鬼だが、かなり血が薄い。
日光も十字架も、聖水やニンニクだって平気だ。
だから、帝人は指さされたたそれ――銀色に光る弾丸の形をしたネックレスによって臨也が傷付いたことが信じられなかった。
(銀の弾丸――しかもご丁寧に呪文まで刻んであるとか、俺に対する嫌悪感丸だしで笑えるんだけど)
笑えると思いながらも、臨也は少し苛立ちを覚えていた。
帝人からネックレスを奪い取り、ポイと投げ捨てる。
「あぁ、貰い物なのに…!」
「ふぅん、貰い物なんだ」
「はい」投げ捨てられたネックレスをばつが悪そうに見つめながら帝人が言う。「今日、後輩から貰ったんです」
「後輩――?」帝人の口から出るには馴染みのない言葉に臨也は眉根を寄せたが、すぐに合点がいったようで再び帝人のワイシャツに手をかけた。「まぁいいや、別に興味ないし。それより帝人君、血」と言いながらワイシャツを開け広げる。
本当は首筋から血を吸うのが牙をたてやすく楽なのだが、傷を隠すためにあてているガーゼが目立つからといって帝人が嫌がるため、臨也はいつも腕から吸血している。
いつものように腕を舐めあげ、少しだけ牙をたてる。皮膚が自らの牙によって裂ける感覚を味わっていると、痛みからか帝人が少しくぐもった声をあげた。
ちらりと帝人を盗み見る。目尻に涙を溜め眉根を寄せてはいるものの、帝人の表情はどこか恍惚としたものを含んでいた。
普段はそんな表情を毛ほども見せない帝人が、血を吸う前に見せる、待望と欲望に揺らめく瞳の色が臨也は好きだった。
ゆっくり、焦らすように牙を押し進める。食事のための行為だったそれは、いつからかそれとは別の欲求を満たす意味合いを持っていた。
〇
『うっ、く、ふっ……ぁ』
『帝人君、どうせ誰も屋上には来られないから声我慢しなくてもいいよ? まあ、もしかすると“趣味の悪い奴”には聴かれてるかも知れないけど』
『あっ、いざやせんぱ……やっ、ふ、うぁ』
耳にはめ込まれたイヤホンから直接脳に流れ込む帝人の甘い声を聞きながら、校庭のベンチに座っていた少年は顔をしかめた。
(折原臨也……俺に完璧に気がついてるな。にしても“趣味の悪い奴”はどっちだっつの)
そう思いながら、耳からイヤホンを引き抜き、手に持っていた音楽プレイヤーに似た機械の電源を落とす。脳を揺さぶっていた声は消え、残ったのは校庭で遊ぶ生徒たちのざわめきだけだ。
(今のところ、折原臨也を貶めるには竜ヶ峰帝人をどう使うのが鍵だな。あいつら互いに気づいてないだけで、だいぶ依存し合ってるみたいだし)
腕を伸ばし、ひとつ欠伸を漏らした後、少年は腕時計を確認した。
もうそろそろ中等部へ戻らなければ、授業に遅れてしまう。
ベンチから起き上がり、イヤホンから漏れる声の発信源であった屋上を見上げ「ばーん」と屋上を撃ち抜く真似をし、少年はその場を去った。
作品名:なんか帝人受けとかのログをぶち込んだもの 作家名:小雲エイチ