なんか帝人受けとかのログをぶち込んだもの
【喉を塞ぐ骨/臨帝】
もう別れましょうか、と帝人から告げられたとき、臨也の中で意外と悲しさや寂しさといった感情は湧かなかった。
それにちょっとした安堵を自分が感じていることに、些か苛立ちはしたが、それたけだ。
目の前の小さなテーブルの上では焼いた魚と白いご飯、それに具の少ない味噌汁がきちんと二つずつ白い湯気をたてて並んでいて、帝人の発した言葉と光景が、酷くちぐはぐに思えた。
なんで、だとか、どうして、だとか、そういった事を、臨也は聞かなかった。
カチャカチャと、帝人の持つ箸と食器がぶつかる音を聞きながら、臨也は「それじゃあね」といつもと同じように別れの言葉を紡ぎ、彼と過ごした四畳半を出た。
先程まで居た部屋へと続いている錆びた階段をひとつ下りる度に、乾いた軋みが小さく響く。
この階段を上り、あの四畳半へ行く事も、恐らくもうないだろう。
手すりを掴んだ指先に、赤錆のざらついた感触を感じながら、臨也はまた一歩階段を下りた。
この家は壁の薄い造りだから、この軋みも全て帝人の耳へと届いているだろう。
自分から別れを切り出した少年は、遠退くこの軋みを聞きながらなにを考えているのだろうか。そう思いながら、臨也はまた一歩階段を下りる。
別れることに寂しさはない。
ただ、胸の隙間を冷やす虚無が残る。
階段をすべておりきり、まだ完全に日の暮れていない空を見上げる。
根本が赤く染まっている空にはいくつもの薄い雲が広がっていて、その一つがなんだか魚の骨のようだと思う。
魚の骨のような雲を見ていると、不意に喉の奥がぎゅっと痛んだ気がして、臨也は唾を飲み込みそれをごまかした。
作品名:なんか帝人受けとかのログをぶち込んだもの 作家名:小雲エイチ