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小雲エイチ
小雲エイチ
novelistID. 15039
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なんか帝人受けとかのログをぶち込んだもの

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【俺の生き様/臨也+静雄+帝人+正臣+他】


俺が池袋で暮らすようになってから、もうかなりたつ。
池袋に来たばかりの頃は、まだここで暮らす奴も俺しかいなかったし、朝から晩まで働きづめでハードな毎日に根を上げることもあった。
深夜に強面の兄ちゃんに蹴り飛ばされた時はさすがにもうこの仕事やめたいとも思ったさ。
けれど住めば都というもので、今じゃここでの生活もかなり気に入っている。
まだ言葉をしゃべれるようになったばかりの小さい子供に「ありがとう」なんて言われた日にゃ、頑張って仕事して良かったって思うってもんだ。なんだかんだで、俺も仕事に誇りを持ってるってわけさ。
今じゃ後輩もできて、立派に社会貢献してる。
最近俺と一緒に働くことになった後輩は、関西出身らしく威勢がいい。
俺は無口だから、客に何か言われてもいつも黙っているが、後輩は「まいど!」だとか「おおきにーほな今日も頑張ってなー」だとか、客に愛想よく喋りかけている。

「言ったって、気付いてもらえないじゃん」
いつか、後輩にそう言ったことがある。
どうせ俺たちが語りかけたところで、客から反応が返ってくるなんてことはないのだから。
何を言っても反応が返ってこないのに虚しくならないのかと問うと、後輩は「それでも、俺の声が届くだけで嬉しいやないですか」と言って笑った。

そんなこともあったなぁなんて思い返していると、獣が唸るような声が、地面を揺らした。
その声の記憶をたどるよりも早く、俺の身体から冷や汗が流れる。
「なんやなんや、地震かぁ?」
後輩が呑気にそう言って、あたりをきょろきょろと見まわす。
そうだ。こいつは池袋に来たばかりだから、この地響きの恐ろしさを知らないのだ。
俺も最近、こっちの方でこの声を聞いた事がなかったから、すっかり忘れていた。
向こうから、黒づくめの男がこちらへと走ってくる。
やばいやばい。これはやばい。危険レベルマックスの事態だ。
この声と、この黒い男が一緒のときは、俺たちの命の危機だと思ってもいい。
「あらーこりゃまたイケメンやなー」
「ばか! 静かにしてろ!」
この危険性を知らない後輩が呑気にそんなこと言うもんだから、ついつい俺が声を張り上げてしまう。
「この黒い奴は、折原臨也っていうんだ」
声を抑えながらそう説明してやると、後輩は興味なさげな相槌を打った。
これだから最近の若者は困る。先輩の話は、真摯に聞きとめるべきだ。
こちらの命がかかわっているのだから、特に。
黒い男がこちらへ走ってきてすぐ、獣の唸るような声とともに、ある男がこちらへと走ってきた。
白と黒の服を着た、金髪のこの男は、恐ろしい男だ。
こいつが、かなりやばい。
俺が池袋で暮らすようになってかなりたつが、こいつによってあの世に行っちまった奴を、俺は何度も見てきた。
「こいつ、この金髪が平和島静雄」
「……はぁ、んでこの二人がどしたんですか?」
「いいから。金髪の方、黙って見てろ」
そう言って、後輩の視線を前に促す。
平和島静雄が、道路標識を握っている。
すると、アスファルトの地面がめきめきと音を立て、そこにあった標識がまるで雑草のように引っこ抜かれる。
さすがにそれを見た後輩も驚いたようで、興奮したように「ちょっと先輩、なんなんすかあれ! あんなん人間やないでしょ!」と声を上ずらせながら言った。
「あいつは凄い怪力だ。そこら辺にあるもん全部壊しちまうから、気をつけろよ」
こいつに教えることは沢山ある。この池袋の酸いも甘いも、先輩である俺が教えてゆかなければならないのだ。
面倒だが、嫌な気はしない。初めてできた後輩は、やはりかわいいものなのだ。
そう思い俺が口を開くより先に、「先輩――!」と後輩が叫んだ。
なんだよ、というよりも早く、後輩がどんどん小さくなる。
いや、後輩が小さくなったのではない。俺の身体が浮いているのだ。
俺の身体の下から、低い声がする。
「いざやぁぁぁぁああ……しねしねしねしねぇ!」
「『死ね、うざい、消えろ、殺す』シズちゃんって本当に語彙が少ないよね。そんなんで日常生活送れるわけ? まあ、俺としては化け物は日常生活なんて送らずさっさと死んでほしいけど」
おいおい、やめてくれよ。俺を持ちあげるこいつを煽らないでくれよ。
そうは言っても、俺の声はこいつらには届かない。
ついに俺は、ぶち切れた平和島静雄の「うるせぇええええ!!」という声とともに宙を舞った。
鳥ってのは、いつもこんな不安定な状態で飛んでるのか、なら、俺の頭の上にとまっても、文句言ったら可哀想だったな。
走馬灯のようにかつての思い出が脳裏を駆け巡り、地面に身体が叩きつけられる。
痛くはないが、身体の中から異音がする。
あ、やばいな、と思った時には、もう目の前が真っ暗になって何も見えなくなってしまった。
意識がどんどん遠くなる。俺も、他の奴らと同じようについに死ぬのか。
後輩が、何度も先輩と叫ぶ声が、意識の狭間で聞こえてきた。
後輩に背を向ける形で横向きに倒れたせいで、あいつの顔は見えない。
どうせここで死ぬ運命だ。なら、ちょっとくらいかっこいい所を見せてやってもいいかもしれない。
そう思った俺は、最後の力を振り絞った。
俺の身体の中から、色とりどりの缶が転がり出る。
ジュース、お茶、スープ、おしるこ。
俺は最新式の自販機じゃないから、品ぞろえはちょっと古いかもしれないけど、それくらい、勘弁してくれよな。
身体の中の飲み物を全部出し切り、俺の短い自販機人生は幕を下ろした。



ピピピピピと、電子音が続いたあと、少し調子のずれたファンファーレの音が響く。
その音を聞いて、右手にペットボトルのオレンジジュースを持った少年が目を丸くし、わたわたと慌て始めた。
「なんだ帝人、なんかあったか?」
その少年の後ろから、金髪の少年がひょっこりと顔をのぞかせる。
そして、ファンファーレの音と、ぴかぴかと点滅する当たりマークを見て感動の声をあげた。
「うわ、当たってんじゃんすげぇ! 俺、自販機当たってんの見たのはじめてだわ」
「僕も。わ、正臣どうしようあと七秒しか時間ない」
「この自販機も俺たちのキラリ輝く青春に気を使ってくれたわけだな帝人ー」嬉しそうににこにこと笑いながら、金髪の少年が素早く自販機のスイッチを押した。「じゃあ俺、コーラっと」
がこん、と中から冷えたコーラが落ちてくる。
「あ、もう、勝手に決めないでよー」
そう言って、帝人と呼ばれた少年がまんざらでもないように笑う。
そんな二人の学生を見つめながら、自販機は「まいどおおきに~」と喋りかけた。
俺ももし生まれ変わったら、人間になって、かつて隣にいた先輩とあんな風に仲良くしたい――誰にも気づかれることのない願いを胸に秘めながら、自販機は今日も人々に飲み物を渡し続ける。