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こらぼでほすと 休暇4

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「気分はどうだい? 」

「・・・・あたま・・いてぇー・・・・」

「クスリが効いているんだ。寝てれば治まる。」

「・・・いま・・・こえ、しませんでしたか・・・」

「いいや、何も聞こえないよ。ほら、私がついていてあげるから。娘さんは眠りなさい。」

 トダカの声で、ニールも目を閉じる。何度か、こういうことがあったから、大人しく言うことはきいてくれるようになっている。ぽんぽんと肩の辺りを叩いて、寝息になるのを確認すると、襖から顔を覗かせた。すでに、口論は終着したらしく、ティエリアは憮然とした顔をしている。

「すいません、聞こえましたか? トダカさん。」

 アスランが気付いて謝ってくる。

「後で、ニールは脇部屋に移そう。ここだと、となりの音で、すぐ目を覚ましてしまう。」

「そうですね。今、八戒さんが、脇部屋のほうへ布団を敷いてくれてますから、次に目を覚ましたら移します。」

 これだけの人数が溢れていては、さすがに煩い。八戒は、口論が始まる前に、脇部屋のほうを整えに行った。どんなに静かにしていても生活音は発生する。それなら、隔離してやるほうが静かに休めるだろう。

「くくくくく・・・相変わらず、キラ様は説得が下手だね? 」

「キラは、言葉でどうにかしようと考えませんから。」

「そこは、きみがフォローするから問題ないか。」

「俺も口下手なので、今回は悟浄さんが取り成してくれました。」

 アスランも、元々、口達者ではない。こういう時は、上手くフォローできないのだが、今回は、悟浄が中に入ってくれて助かった。

「娘さんが起きちまったか? お父さん。」

 その悟浄が、襖の奥を覗く。

「起きたんで誤魔化して寝かせた。」

「ママニャンも、ここだとオチオチ寝てられないな。うちのが布団整えたら、俺が運ぶよ。お父さん。」

「そうしてくれ。よく休ませないと、熱が下がらないからね。」

「というか、おたくの娘さん、人気者だね。ダウンの回覧で、これだけ集まるんだからさ。」

「うちの子が愛されてて嬉しいよ、私は。」

「ははは・・トダカさんも、相当に親バカになっちまったなあ。」

 だいたい、トダカは、来てから、ほとんどニールの傍から離れないのだ。目を覚まして誰もいないとと寂しがるだろうと言う理由で。三十路前の青年に、それはどうだろうという意見なのだが、ハイネも似たようなことで布団を並べているから、似たり寄ったりのバカさ加減かもしれない。今も、襖からは出てこないのだ。

「褒め言葉と受け取っておくよ、悟浄くん。」

「そうしておいてください。準備できたら運びますんで、それまで看病よろしく。」

「了解。」

 そーっと、また襖は閉まった。じじいーずが、ニールのことはフォローしているので、そちらは任せることになっている。こういう時は年の功だ。

「ほれ。紫子猫ちゃん。ママニャンの傍についててやれ。」

 憮然として卓袱台の前に座っているティエリアの肩を叩いて、悟浄が動かす。そして、台所でおしゃべりしているキラのほうへはアスランを派遣する。騒々しいのには、早々にお引取りいただいて、看病の手配もしたら、悟浄たちも引き上げるつもりだったのだが、どうも、これは、すぐには引き上げられそうもない。トダカのほうが店の開店準備で先に引き上げるから、それまでは居座ることになりそうだ。


 レイが作ったおじやは、細かくした野菜入りで卵でまとめてある、あっさりとしたものだ。悟浄が、親猫を脇部屋に運んだ時に、目を覚ましたので、その時に差し出した。すでに、午後に突入した時間だが、食欲の湧かない親猫は、空腹なんかは感じていない。だが、「俺が作ったので、味の保証はありませんが・・・」 と、レイが恥ずかしそうにお盆に載せた器を差し出してくれば、さすがに頬を緩ませた。

「へぇー、レイは料理もできるんだな。ま、いつも手伝ってくれてるもんな。」

「味見は、八戒さんがしてくれたので大丈夫だとは思うんですが。」

 一応、「吉祥富貴」のおかんである八戒に味見はしてもらった。こんなものでしょう、と、頷いてくれたので、レイも気分的には不安ではない。

「でも、俺、こんなに食えないぞ。」

「食べられるだけでいいです。」

 じゃあ、いただきます、と、匙で掬って、ニールはパクッと口に入れる。少し冷ましてあるから、問題はない。もぐもぐと食べて、うんうんと頷いた。

「うん、美味いよ。」

「よかった。」

 さほどの量は食べられないが、それでも親猫は、レイが作ってくれたものをできるだけ平らげた。その後、クスリを飲ませるのに水の用意がなかったから、それにはティエリアが走ってくれた。

「悪いな、俺の世話をさせちまって。」

「いつも、俺はママに世話をされてます。たまには、交替してもいいと思いますよ。」

 レイがダウンするなんてのはないが、何かしら年少組は、寺のおかんの世話になっている。食事や洗濯という家事全般だけでなく、何かしらのイベントには、それに相応しいものが用意されているし、寺にくると、普通の日常というものを作り出してくれている。独立治安維持部隊の情報で、殺伐した気分になっているのも、ここにくれば解消される。何を、というのではない。ただ、普通の暮らしというものが、寺にはあって、そこの中心にママがいるのだ。

「明日には、どうにかなるさ。」

「無理はしないでください。俺もティエリアも、忙しいわけじゃない。それに、八戒さんが、いろいろと教えてくれたので、ママの世話も問題はないです。」

 トダカは、そろそろ出勤時間だ、と、ニールの移動が終わったら、帰って行った。沙・猪家夫夫は、まだ居間のほうにいるが、こちらも間もなく、出勤時間だ。レイは、本日の指名がないことをアスランに確認して休むことにした。さすがに、ティエリアとニールだけというのは、ちょっと不安だったし、こういう時に、ママに何かしてあげたいとも思った。大したことではないのだが、少しでも気分良く過ごしてほしいなんて思ってもいる。レイが、寺で気分良く過ごしているように、ママにも、その気分になってほしい。

「まあ、寝てれば治るから、気にしなさんな。」

「ええ、ゆっくり休んでください。」

 てってかてーとティエリアが、コップに注いだ水を運んでくる。文机に置かれている薬をレイが取り出して用意する。

「至れり尽くせりだな。ありがと。」

「いちいち、礼はいりません。他に希望はありませんか? 」

「してほしいことは? 」

「別にないから、おまえさんたちも、のんびりしてろ。・・・・・レイはバイトだろ? 」

 双方から差し出されているものを手にして、ニールは口に含む。時間は、よくわからないが、トダカが出勤だと帰ったのは、ニールも知っている。だから、バイトも出勤時間だろうと言う。

「今日のバイトは休みです。」

「ん? 」

「指名もないし、店のほうも忙しくないので休みにしました。居間のほうで資料を読んでいますから、何かあったらティエリアに伝令を頼んでください。」
作品名:こらぼでほすと 休暇4 作家名:篠義