二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

15年先の君へ

INDEX|8ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 

しばらく対峙した俺たちだが、不意に向こうが口を開く。臨也は、ふ、と額に汗を浮かべながらも笑ってみせた。

「どういうことか、聞いても答えてくれなさそうだね」

殺気立つ俺を見てそう口にする。臨也は笑みを消して、続けた。

「なんでそこに“俺”が居るのか、非常に謎だけど、今日はこのくらいにしておくよ。生き別れの兄だとか言うオチならいいんだけどね」

言うだけ言って奴が駆け出す。その背を衝動的に追いかけようとして、足が止まった。さっきそれで失敗したことを思い出したからだ。

「あぁぁあああ、クソッ!」

俺はその場で叫び、左手を地面を打ちつけた。アスファルトに拳がめり込む。
会わせてはいけなかったのだ。こいつを、守るつもりだった。守れると、思っていた。
自分がもうひとり居ると知ったことで、これから臨也がどう動くのか俺には見当もつかない。だが、ロクでもないことになることだけは確かだった。

「…ちくしょうっ」

捲りあがったアスファルトを握りこむ。それは水を含んだ泥のように手のひらの形になった。

「いいよ、シズちゃん」

静かな声がかかった。振り返れば、臨也が縁石に腰掛けながら俺を見ていた。
視線を合わせれば、臨也はふっと目を伏せる。

「遅かれ早かれ、こうなっていたはずだ。あいつだって馬鹿じゃない。今の俺がそうしているように、死に物狂いで情報を探ったんだろうね」

あの傷はその証拠だと、奴は呟く。だが俺は、そんなことはどうでもよかった。ただ自分が、腹立たしくて仕方がない。

「そんな顔しないで。こうやってあいつと距離が取れただけでも命拾いしたようなものだ」

にっこりと微笑まれ、俺は情けない気持ちでいっぱいになる。俺があいつを追いかけなければと、後悔ばかりが頭に浮かんだ。
臨也はそんな俺に息をつき、腰を上げた。
どうやら臨也の野郎は本当に逃げたらしく、徐々にこいつの顔色も良くなっている。
座る俺の頭に、ぽんと手が置かれた。
長く節だった指が、頭を撫でる。固い指輪の感触がした。

「ありがとう、シズちゃん」

サングラス越しに微笑まれ、礼を言われるようなことはしてないし、気恥ずかしくて俺は線を逸らした。
俯いた俺は、先ほど聞いたこいつの言葉が気になった。地の底を這うような、あんな恨みがましい声が。

「手前、は…」
「ん?」

臨也が頭から手を離し、しゃがんで視線を合わせてきた。
その色の濃いサングラスは、どこまでもこいつに似合っていない。

「今の自分が、嫌いなのか…?」

臨也は表情を変えなかった。ただ穏やかに微笑んだままで、静かに肯定する。

「そうだね、大嫌いだ。何もわかってない。自分が何をしているのか、それがどういう結果をもたらすのか、何も知らずに生きている。それが腹立たしくて仕方がない。今のあいつに近づけたなら、間違いなく俺は俺を殺してる」
「なんで、そんなに」
「言っただろう?俺たちがどんな未来を辿るのか。シズちゃんと夫婦なんて関係はごめんだね。あんな思いは、二度としたくない」

それは未来の俺に向けられた言葉なはずなのに、ずきりと心臓が痛んだ。まるで俺が拒絶されたかのようで、ぐっと唇を噛む。

「なら、そのサングラスは…なんだ?」

俺の問いかけに、初めてこいつが表情を変えた。目を見開いて、すっと細める。
瀕死であったはずのこいつが、気力だけで手を動かし臨也がそれに触れることを阻止したのだ。
それくらい、こいつにとってそれはよほど大事なものだと思えた。

「…さすが、自分の持ち物だと察しがいいね」
「え?」
「これはさ、シズちゃんのだよ。顔がばれると面倒だから、これだけ借りて持って来ちゃった」

そのサングラスをかけたままで、臨也はにっこりと微笑む。
未来の俺が、なんだってこんな物を持っているのかはわからない。だがそれをいつまでも身につける臨也に、何ともいえない感情が芽生えた。
単純に考えて、俺は自分で顔を覆う。顔が赤くなったり、していないだろうか。

「どうしたの、シズちゃん」
「いや…」

まさかと何度も詰問を繰り返した。だがいくら考えても、辿り着く考えはそれだ。
経験したことがないから、これがそうなのかはわからない。
そう呼んでいいのかわからない。
だが俺は今間違いなく、未来の俺に嫉妬していた。
それはつまり、未来のこいつに恋をしているということだった。


作品名:15年先の君へ 作家名:ハゼロ