こらぼでほすと 桃色子猫
「いらっしゃい、フェルト。」
「ようこそ、キラ、フェルト。」
玄関では、今や遅しと、某国家元首様と歌姫様が、リゾート全開なお気楽アロハで出迎えだ。シンとレイは、本日はファクトリーの試作機のテストに借り出されている。今日の午後まで、カガリも墓参りや慰霊碑での式典なんかには出席していた。一応、一週間の休みだが、ちょこまかと細かい用事はあるから、適当に出入りはすることになる。歌姫の護衛陣は、ヒルダ以外はラボで待機だ。さすがに、完全に留守にするわけにもいかないから、そこいらをローテーションで埋めている。臨戦態勢ではないが、そこそこの情報収集は必要だ。
「こんにちわ、ラクス、カガリ。」
フェルトも嬉しそうに挨拶する。夏には、夏の遊びを、と、約束していたから、それが叶ったのは嬉しい。
「そんな暑苦しいのはダメだ。ラクス、フェルトの衣装は完璧だろうな? 」
桃色子猫は、いつものTシャツにジーパンなんて格好だ。移動は動きやすい格好のほうがいいから、いつもこういう感じになる。それを、カガリは指摘する。
「もちろんですわ、カガリ。さあ、フェルト、私くしの選んだ服を試してくださいな? とても愛らしくなって、ママもイチコロですわよ? キラと悟空の分も用意しておりますので、キラ、悟空、一緒に参りましょう。」
アスランは無視して、歌姫様は、キラとフェルトの腕を取って、悟空に声をかけて屋敷の中へ消えていく。いつものことだから、アスランは気にしない。
「とりあえず、ビールなんかどうだ? アスラン。」
「そうだな。」
残っているカガリが、アスランを案内する。これから、一週間は、年相応の遊びを楽しむつもりだが、まあ、いろいろと打ち合わせることはある。
「今夜、キサカが来るぞ。アローズの動静で気になることがあるそうだ。」
「それは、キラとラクスにも聞かせないといけない内容か? 」
「おまえが聞いて、休み明けに伝えてやればいいだろう。ハイネも来るはずだ。オーヴの偵察を引き受けてくれたらしいな? 」
「ああ、ストライクなら隠密行動向きだからさ。うちにも有用な話だったから貸し出した。その報告もやるのか? 」
「そうなるんじゃないか。・・・・なかなか。完全休養というのは難しい。」
「それは諦めろ。俺たちだって、完全とはいかないんだ。」
何かしら、オーヴとの連携した仕事がある。だから、各人が出入りするが、名目上は、カガリの別荘でのホリデーということにはなっている。世界は、延々と動いている。だから、完全に何もかも断ち切って休める日というのは少ない。今は、特に連邦の動向に目を光らせている。お盆休みではあるが、どこの上層部も完全に休んでいるということはない。キサカなんかフル活動状態だろう。
「キサカよりは休めているかな。」
「カガリンラブもだろ? あそこも、今は忙しいはずだ。」
「まあなあ。だが、休みは取るようには命じてあるぞ。まだ、本格的に、どうこうする時期じゃないからな。」
ゆっくりと館の中へ、アスランとカガリも歩き出す。ここには、カガリの一族のものしかいないから、こういう話をおおっぴらにしても問題はない。
「私のママは元気か? 」
「そこそこ元気だ。そうだ、差し入れは控えめにして欲しいって頼まれた。」
「控えめにしただろ? あれでも多かったか? 」
ゴールデンウィークに遠征して来れなかった寺の夫婦たちに、お土産を用意したのだが、それが多かった、と、言われてカガリは首を傾げる。割と当人としては、控えめにしたつもりだったのだ。
「悟空の食べっぷりから計算したら、あれぐらいじゃないとな。」
「そういう意味じゃなくて、金額的なことだと思うよ、カガリ。うちのママは、庶民派だからさ。」
「あーそういうことなら、娘からの仕送りに文句は言うなって伝言しといてくれ。」
「了解。」
部屋に案内されて、荷物を置くと、屋敷の外に案内される。そこには、プールがあって海も一望できる。そこで乾杯しよう、と、ふたりしてデッキチェアに座り込む。すぐに、冷えたビールが運ばれてきて、乾杯とグラスを合わせた。何かとあるが、まあ、楽しい休暇の始まりだ。
翌日は、朝からクルーザーで沖に出て、サンゴ礁が群生しているリーフで、シュノーケリングとなった。体力自慢が揃っているから、誰が一番、潜っていられるかなどという戦いが始まったりする。
「あっちは、付き合わなくていいよ、フェルト。僕らは、こっから魚の観察しよう。」
「俺は、船から監視しているから、何かあったら手を振ってくれ、フェルト。」
キラとアスランが、桃色子猫と本来のシュノーケリングをやる。マスクとシュノーケルと足ヒレだけだから資格も要らないし、簡単に海を覗くことができる。黄金週間にも、少しだけやったから、フェルトも、用意して海へ飛び込む。アスランが船上からの監視をしているので、何かあれば、すぐに船を寄せられるようにした。
サンゴ礁のある海中は、比較的浅いから、足がつく程度の場所もある。そこを拠点にして、キラとフェルトは優雅に海中を覗き、時たま、潜ってみたりするという優雅な遊びだ。色とりどりの熱帯魚が、サンゴの間を泳いでいる。溜息が出るほど綺麗な景色だ。リーフの外は、水深が100メータークラスだから、そこを覗くと、不思議な青い色になっている。そんな中を、ふたりして楽しく泳ぐのは、実にいい感じだ。
そして、体力自慢のほうは、すでに狩りに展開していたりする。カガリの所有する島の周辺なので、ここでなら魚介類を捕獲しても罪にはならない。ならないが、悟空が、二メータークラスのナポレオンフィシュを抱えて浮上してきたら、さすがにカガリが殴った。
「悟空、それはヤメロッッ。ここいらの主じゃないかっっ。」
「えーーこれ、焼こうぜ? 青くてうまそうだ。」
「バカッッ、それは、あんまり美味くないぞ。獲るなら、美味いのにしろっっ。」
バシャバシャと暴れているナポレオンフィシュをリリースすると、悟空は、ぶつぶつと文句を言っているが、カガリは無視だ。
さらに、シンが、ご機嫌で二メータークラスのタイガーシャークの尻尾を掴んで上がって来た。それは、人も食い殺すサメだというのに、倒してきたらしい。
「これ、どうだ? アスハ。」
「・・・・・それは、フカヒレの素だが、干さないと食うとこないぞ、シン。身は、アンモニア臭い。」
で、もちろん、レイも掴まえてきたのだが、長さではシンのサメと近い位のでかいウツボだった。こちらも噛み付く獰猛な魚だというのに、白目を剥いているところを見ると、倒してきたらしい。
「カガリ。これは?」
「まだ食べられる部類だが・・・・あまり推奨できないな。おまえら。もっと錦エビとかカツオとか、そういう美味そうなのがいるだろーがっっ。しょうがないな、私が手本を見せてやる。」
ボスンと、某国家元首様が潜ると、大きなヤコウガイとシャコガイを両手にしてきた。さすが、サバイバル能力の高いカガリだ。おいしいところを選んでくる。
「これ、刺身でも焼いても美味い。こういうのを獲れ。」
作品名:こらぼでほすと 桃色子猫 作家名:篠義